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Sunday, June 16, 2024

【新作ミュージカル】《モンパルナスの奇跡~孤高の画家モディリアーニ》 アーティストの苦闘を演じ切った浦井健治 ... - 読売新聞社

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6月15日、よみうり大手町ホール(東京)で注目の初日を迎えた新作ミュージカルの《モンパルナスの奇跡〜孤高の画家モディリアーニ〜》。この日の昼に行われた公開ゲネプロで取材しました。(ライター・山本まりこ)

モディリアーニのピュアな内面引き出す

モディリアーニといえば、あのだれも首の長い作品群と横たわる裸婦を真っ先に思い浮かべますが、時に魅力的な画家は、その作品のみならず、生き様や哲学までもが強烈に人を惹きつけてしまうものです。

イタリア生まれのユダヤ人、ミステリアスな人間性、35年と短命でおまけにイケメンときては多くの創作者が放っておかないのも頷けます。

ピカソ、藤田嗣治も滞在した芸術家の聖地パリ・モンパルナスを舞台に、モディリアーニの生涯に着想を得た新作ミュージカルの誕生です。

芸術家モディリアーニのことピュアな内面を、清潔なまでに引き出したのは〈浦井健治〉でした。男女問わずその才能に惚れ込んでしまうモテ男に相応しい風合いを醸し出します。

誰もが愛さずにはいられない魅力的なモディリアーニを演じた浦井健治 Ⓒ曳野若菜

芸術を守る 不可欠な理解者たちの存在

モディリアーニの才能に惚れ込み詩人から専属画商へと自ら転身することになるズボロフスキーを、〈稲葉友〉が体当たりで魅せました。ミュージカルは初挑戦というフレッシュさは、ズボロフスキーと大いに重なるところがあります。

金も名声も寄せつけない誇り高き芸術家とて、どこかで社会的評価を必要とするのも事実。ふたりの男の出逢いと闘いの歩みは、今も続く、芸術表現と社会的需要とのせめぎ合いのようで、多くを考えさせられました。

芸術を歪めるブルジョワや強欲な画商たちから身を守るために、繊細な感性のアーティストには、やはり理解者が必要です。

モディリアーニを導いたミューズたち

モディリアーニには、インスピレーションを与えるミューズたちの存在も大きかったことでしょう。

何と言っても、14才年下の妻・ジャンヌなしには語れません。彼女自身も画家で、たびたびモディリアーニの絵のモデルになりました。

〈宮澤佐江〉が、ジャンヌの度胸を感じさせる存在感で支え、どこかで彫刻に拘ろうとするモディリアーニを、本格的に絵画の道へと誘導する場面も印象的でした。

また筆者には、モディリアーニの隠れた真のミューズだったのではないかと思わせる存在感だったのが、〈秋本奈緒美〉のルニアです。

叶うことのない、モディリアーニへの想いの切ない描写に惹き込まれました。

モディリアーニのモデルになるということは、女性にとって、ほとんど内面を理解され愛されるに等しいことなのではないかと想像します。

舞台美術には、モディリアーニの絵がたびたび登場します。そこには、ミュージカルに等しく、モディリアーニに関わった人物たちが集められているようです。

実際のモディリアーニがどうであったか、今となっては想像することしかできませんが、生き生きと蘇るその魂と、とりまく人間模様に胸が熱くなる約2時間15分(途中休憩あり)でした。

右から秋本奈緒美、稲葉友、浦井健治、宮澤佐江、G2の各氏

オペラには同じパリを舞台とした芸術家たちの話に《ラ・ボエーム》という作品がありますが、芸術家の情景を甘美に模写したのがプッチーニなら、芸術家の肉声とパリの狂騒をここ東京に蘇らせたのがG2(脚本・作詞・演出)×かみむら周平(音楽)と言えるでしょう。

ピアノ・ヴァイオリン・チェロが奏でる音楽は、力強く、時にもの悲しく、登場人物たちの内面を代弁するかのようでした。

《モンパルナスの奇跡~孤高の画家モディリアーニ》はよみうり大手町のホールで6月23日(日)まで。チケットは全席指定12,000円。詳しくはサイト(https://montparnasse-musical.com/)へ。なおチケット好評につき、千穐楽から1週間のみ期間限定アーカイブと、DVDの完全受注販売も決定。よりじっくりと作品を楽しむことができます。(美術展ナビ編集班)

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