<ここが論点・デジタル法案>
米軍基地訴訟の原告名簿や大学入試の点数…。こうした個人情報を、省庁や国立大学法人が個人を特定できないように加工して民間に提供しようとしていたことがデジタル改革関連法案の参院審議で明らかになった。
◆米軍基地訴訟の原告名簿も
防衛省は昨年12月、個人情報ファイルの一覧を示して活用を募集。表題には米軍横田基地(東京都)の夜間飛行差し止め訴訟や、航空自衛隊小松基地(石川県)の騒音訴訟などと記されている。原告名や生年月日、住所、賠償請求額などが含まれるファイルで、訴訟関係者に驚きが広がった。
こうした活用の募集は行政機関個人情報保護法などに基づき2017年度から始まり、国のどの行政機関や独立行政法人でも行われ、毎年度約2000件。情報を利用したい個人や団体は審査に通れば、匿名加工後に提供される。行政機関などが持つ膨大な個人情報をデータ化し、民間のビジネスなどに役立てる狙いだ。
◆契約に至ったのは1件
今のところ応募は少なく、17年度なし、18年度8件、19年度1件。これまでに契約に至ったのは1件で、独立行政法人「住宅金融支援機構」が118万人分の融資情報を住信SBIネット銀行に提供した。利用目的は「住宅ローンの人工知能(AI)審査モデルの構築」だった。
それでも、関連法案に含まれる個人情報保護法改正案は、活用の募集を義務付ける対象を、多くの個人情報を持つ都道府県と政令市にも広げる。
◆「復元不可能な匿名加工情報」
参院審議では、全国の国立大学法人が受験生の入試点数や授業料免除情報の活用を募集していることも判明し、共産党の田村智子氏は「プライバシー侵害だ」と指摘。平井卓也デジタル改革担当相は「完全に復元不可能な匿名加工情報にした時点で個人情報ではなくなる」と理解を求めた。
自分の情報を提供の対象から外すよう求めるための規定はない。田村氏は「知らないところで第三者に活用されることを受け入れないといけないのか。国民的な合意があるとは思えない」と問題提起する。(井上峻輔)
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参院で審議中のデジタル改革関連法案の主な論点を随時紹介する。
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