アーティストが提供する作品や特典に対し、買い手が「言い値」で額を決められるインターネット上のサービスが話題になっている。福岡市のベンチャー企業「FLAG」が開発したもので、ファンは「いいね!」の気持ちを価格で表すことができる。クラウドファンディングをはじめとした「応援消費」が活発化する中、その進化形として注目されている。
サービス名は社名と同じ「FLAG」。ミュージシャンやクリエーターが作品やグッズ、特典サービスなど売りたいものをアップすると、価格が表示される。これは売り手が決める最低価格。その隣にある「+」をクリックすることで、ファンはいくらでも上乗せできる。
極論すれば、最低価格がゼロ円ならファンに値段を委ねることになる。また、売り手が「希望価格」をつけ、「+」と「-」どちらもクリックできるようにすることも可能。利用者は昨年9月の開始以来、既に600件を突破した。
意外だったレコード会社の反応
着想したのは、東京の音楽業界で活躍した貞光賢一社長(41)=福岡県直方市出身。実力があってコアなファンがいても、なかなか「飯が食えない」ミュージシャンを数多く見てきた。何かできないかと考える中で思い付いたのが業界の常識の逆を行く発想だった。
そもそも音楽や芸術には決まった価格はないのに、CDなど、売り手側の業界が決めるシステムになっている。「ファンの熱意をファン自らが価格に表せる仕組みがあったら、アーティストを支えてくれるのではないか」
独立して福岡に拠点を置き、2017年から開発を始めた。並行して、レコード会社やプロダクションなどにプレゼンして回った。アーティストとファンが直接つながる仕組みだけに、嫌な顔をされるのではないかと思ったが、意外なことに反応は良かった。
「CDが売れない時代。業界も新たな収益源を求めていた」
そこに新型コロナウイルス禍が重なった。思うようにライブもできない中で、新たな仕組みへの期待が高まっているのを感じ、サービスを開始した。
ファンの存在を感じながら
FLAGでは、動画や画像、ニュースの発信などもできる。サービスへの加入は無料で、利用者は売り上げの10%を利用料として納める方式だ。
東京と千葉を拠点に活動する男女3人組のボーカルユニット「EAST LAND BEATS」は昨年10月からサービスを利用している。
今、主に活動を支えてくれるのは、ファンクラブ会費だ。用意したのは月額1000円、3000円、5000円の3コース。メンバーとのオンライン会話やスタッフ体験、ライブの最前列確保など、値段ごとに特典を考えた。
不安もあったが、スタートしたら5000円コースへの入会がほとんど。しかも1000円、2000円と「熱意」をプラスしたり、販売グッズに上乗せしたりしてくれるファンもいて、3人の生活費は十分確保できているという。リーダーのNORi(27)は「本当にありがたい。メンバーでできる限りの知恵を絞って、ファンへの恩返しを考えていきたい」と話す。
オークション形式での作品販売も可能で、ミュージシャン以外にも、イラストレーターや画家など利用者は拡大している。「自分の熱意を示せることでファンは納得感が持て、クリエーター側はファンの存在を感じながら、その道で生きていける。そんなサイクルを生み出せたら」。貞光さんの思いは着実に広がっている。
(加茂川雅仁)
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