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Thursday, January 27, 2022

海を越え音楽を 国内外でアーティスト奮闘、コロナ下の挑戦|あなたの静岡新聞 - @S[アットエス] by 静岡新聞

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 新型コロナウイルスのオミクロン株が猛威を振るい、海外から日本への入国規制が一層強まる中、ヨーロッパなどを拠点に国際的に活躍するクラシック演奏家が日本国内にとどまったり、厳しい検疫をクリアしたりして、聴衆に音楽を届けている。開催にこぎ着ける演奏会がある一方、断念を余儀なくされるケースもある。過酷な環境の下で奮闘するアーティストやコンサート開催に向けて尽力する関係者の思いを紹介する。

静岡公演のため帰国延期 昨年11月から日本滞在 指揮者ジョン・アクセルロッドさん

  photo02 自炊のため都内のスーパーへ買い出しに訪れた指揮者のジョン・アクセルロッドさん。この日は浜松産のセロリなどを購入=1月中旬
 今月28、29の両日、県内で開かれる演奏会を指揮するため、スイスへの帰国を延期し日本国内にとどまっているマエストロがいる。米国出身の指揮者ジョン・アクセルロッドさん。滞在延長を決めた最大の理由を「静岡のため」と言い切る。

 菊川市の菊川文化会館アエルで行われる、県文化財団などが主催する京都市交響楽団のコンサート。28日は中学生のための特別な演奏会だ。同楽団の首席客演指揮者を務めるアクセルロッドさんは、昨年11月中旬に来日して京都での演奏会に出演し、本来は12月に一時帰国して、今月再来日の予定だった。

 しかし、オミクロン株が急拡大。帰ると再入国できない公算が大きく、12月以降の日本での演奏会のオファーも入り始めていたことから「静岡での演奏会を実現するため、日本に残ることを決断した」と振り返る。

 くしくも年末はベートーベンの交響曲第9番(第九)が各地で演奏される、クラシック音楽業界のハイシーズンだった。指揮者らの来日がキャンセルとなり、アクセルロッドさんは窮地に陥った在京オケから代役として引っ張りだこになった。読売日本交響楽団の第九演奏会を6公演指揮し、NHK交響楽団や東京都交響楽団とも共演した。

 偉大な教育者でもあった巨匠レナード・バーンスタイン(1918~90年)に16歳で薫陶を受けたアクセルロッドさん。「一流の演奏であれば、子どもたちも受け入れてくれるはず。クラシック音楽を先入観なしに聞いてほしい」と期待する。

 感染症の嵐が吹き荒れる中、自炊を心掛けている。都内の滞在先の近くで買い出しの日々。「静岡のお茶を飲んで良い演奏を届けます」。チャイコフスキーの交響曲第4番などを披露する演奏会に向け、意気込む。

 

過酷な行動制限の中で ピアニスト小川典子さん(浜松国際コン 審査委員長)

  photo02 小川典子さん(c)S.Mitsuta
 国際的に活動するピアニストの小川典子さん=浜松国際ピアノコンクール審査委員長=は、新型コロナ禍の下、拠点の英国と日本を仕事で10往復した。日本に入国する際の困難を聞いた。

 -最も大変な点は。

 「私はこの30年あまり、英国と日本を行き来してきた。日本人なので入国はできる。ただ、先進諸国でも格段に厳しい最大2週間に及ぶ検疫と行動制限があり、その間は演奏会やレッスンなど社会活動ができない。かなり苦しい」

 -仕事への影響は。

 「2週間とはいっても、移動時間などを含め海外での仕事と日本での仕事を少なくとも16日以上空ける必要がある。日本でできる仕事は従来の半分以下。日程の都合から断らざるを得ない仕事も少なくない」

 -音楽家ならではの苦労もあるのか。

 「ピアニストは楽器を持ち歩けない。ホテルでの隔離中は本格的な練習をすることができない。第11回浜松国際ピアノコンクールも中止となり、400人以上の将来ある若いピアニストを失望させてしまったことは心苦しい」

 -音楽家の心情は。

 「演奏会をどうでもよいと思ってキャンセルする音楽家などいない。みな日程などで究極の選択を迫られ、心が痛んでいる。日本に行きたいと思っているアーティストは大勢いる」

 おがわ・のりこ 1987年リーズ国際ピアノコンクール入賞以来、英国と日本を拠点に国際的に活動する。2018年第10回浜松国際ピアノコンクールから審査委員長。英ロンドン在住。

 

静岡県内主催者、薄氷踏む思い オミクロン株影響大きく

  photo02 新型コロナ禍の中、名演を聞かせたゲルハルト・オピッツさんのピアノリサイタル=1月8日、静岡市葵区の静岡音楽館AOI(同館提供)
 演奏会を主催する音楽ホールの関係者も薄氷を踏む思いだ。新型コロナの感染状況が見通せない中、チケット販売の判断など、気を抜けない日々が続く。

 静岡市葵区の静岡音楽館AOIで今月8日にドイツの巨匠ゲルハルト・オピッツさんのピアノリサイタルが開かれた。昨秋に入国したオピッツさんは全国各地で公演を開催。ツアーの最後を飾った静岡公演のチケットは販売期間の感染状況の落ち着きもあって、約600席が完売した。

 一方、2月3日に同館で予定されていたベルリン・フィルコンサートマスターの樫本大進さんの演奏会は中止に。昨年12月中旬、延期していたチケットの販売に踏み切ったが、年末年始をへてオミクロン株が急拡大。樫本さんや共演者の入国が難しくなったという。

 同館学芸員の小林旬さん(50)は「市民が音楽を聞く機会をなくしたくない。十分な対策を取った上で1回でも多くの演奏会を開催できるようベストを尽くす」と強調する。

 29日に名曲演奏会@菊川 28日の中学生対象の演奏会は一般客の入場はできないが、京都市交響楽団は翌29日午後2時から、同じ菊川文化会館アエルで名曲コンサートを開催する。

 19世紀ロシアを代表する作曲家チャイコフスキーの作品によるプログラム。中学生向けの演奏会で披露する交響曲第4番と歌劇「エフゲニー・オネーギン」のポロネーズに加え、ピアニスト横山幸雄さんをソリストに招いてピアノ協奏曲第1番を演奏する。

 全席指定。S席4800円。A席3800円。こども・学生1000円。問い合わせは、グランシップチケットセンター<電054(289)9000>へ。

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