鮮烈な色使いと温かみのあるタッチで描かれたリンゴやキウイフルーツ。彼女の絵を初めて見た日から心をわしづかみにされた。作者は伊予市下吾川のアーティスト沖野あゆみさん(45)。オイルパステルで生み出す感性豊かな作品は全国の美術公募展で入選し、商品化もされるなど大きな注目を集めている。沖野さんの作品はなぜ多くの人を魅了するのか-。制作現場となっている松山市余戸南6丁目の障害者支援施設「スマイル」を訪ねた。(原田茜)
迷いなく 感性のまま表現
お気に入りのキャラクターのマスクを着けて、絵を描く沖野さん
肌寒さが残る2月下旬の昼下がり。スマイルの一室で、沖野さんは水色の画用紙に向き合っていた。黒のオイルパステルを力強く走らせ、ひな人形のアウトライン(輪郭線)を描いていく。彩色は1月に手に入れたというソフトパステルのセットから。242色もの中から迷いなく1本を取り、丁寧に塗り広げた。頭の中で作品が完成しているかのようなスピード。最後に背景を塗り分け「バックの色を決める時が楽しい」と照れくさそうに笑った。
この日は「おひなさま」「梅の花と緑」など4点を仕上げた。作品の下部にローマ字で署名を入れ、タイトルも自身が付ける。お気に入りのスタッフには似顔絵をプレゼントしており、「浩平さん」のモデルとなった松本浩平施設長(43)は作品を手に、「いつもありがとう」と目尻を下げた。
次々に美術展入選
この日完成した「梅の花と緑」を手にする沖野さん
沖野さんは脳性まひで知的、身体の障害がある。食事や入浴といった介護をはじめ、日常生活上の支援を提供しているスマイルで、さまざまな活動を体験できればと2003年に通所を始めた。現在は週2回のペースで、主に絵を描くなどして過ごしている。
スマイルが日中の活動にアート制作を取り入れたのは09年。利用者により充実した日々を送ってもらいたいとの思いからだ。施設には美術の専門家がいなかったため、スタッフは県外の先行事例を参考に研修を重ね、手探りで進めてきた。小さい頃から絵が好きだった沖野さんも10年ごろから、今の作風につながるオイルパステルを使って描き始めた。
沖野さん(右)を見つめる田村さん。制作をサポートしている
「筆圧の強い沖野さんにはオイルパステルが一番合っていた」。管理栄養士で、創作活動を支える田村恵理さん(43)はこう振り返る。ある時、メモ帳に描かれたフクロウが目に留まった。田村さんはそのフォルムに引かれ、動物を描いてみるよう勧めたところ、構図や色合いなど独創性が光る絵が出来上がるようになった。
驚いたような表情を浮かべながら木を伝う「キツネザル」や、寄り添う2羽の「フラミンゴ」…。ポップでインパクトのある作品は全国の美術公募展などで次々に入選。市内外での展示会を通じてファンも増えていった。
松山市道後地区の老舗酒店の倉庫にも沖野さんの作品がある。アートによる地域活性化を目指す19、20年度の「道後アート」を機に、シャッターを彩る「パンダ」と「ウツボ」は今も抜群の存在感を示している。
障害の有無 アートに関係なく・・・
【障害者のアートを支援する活動の本質とは。魅力満点な沖野さんの作品も紹介します!!】
からの記事と詳細 ( 心奪われる感性 アーティスト沖野あゆみさん(伊予市)の世界 障害を超えて - 愛媛新聞 )
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