「うっせぇわ」の記録的ヒットにより社会的現象を巻き起こしたAdo、「春を告げる」のロングヒットをきっかけに話題を集め、メジャーデビューを果たしたyama。さらにTikTokの弾き語り動画で注目されたりりあ。(「浮気されたけどまだ好きって曲。」)、ひらめ(「ポケットからキュンです!」)、もさを。(「ぎゅっと。」)など、顔を出さず、素性を明かさないまま活動を続け、幅広い支持を得ているアーティストが続々と登場している。その最大の利点は、歌、楽曲の魅力をダイレクトに届けられること。年齢やジェンダー、ルックス、出自などの情報を適度に抑えることで、純粋に音楽だけを受け取ってもらえる、というわけだ(もちろん、歌と曲だけで勝負しなくてはいけないシビアさもあるのだが)。また、アーティスト自身のビジュアルに頼らず、イラスト、アニメ、CGなどで楽曲のイメージを的確に表現できることも、“顔出ししないアーティスト”のアドバンテージだろう。
今年2月に突如として登場したWONも、素性を明かさず、楽曲と歌だけで注目を集めているアーティストだ。その魅力は、感情豊かなボーカル。歌い出した瞬間にリスナーを惹きつけ、力強さと切なさを併せ持った歌声で魅了することができるーーそれこそが、WONの最大の武器だ。
WONの最初の楽曲は、今年2月にYouTubeで公開された「日記(Acoustic ver.)」。作詞をWON、作曲を藤森元生(SAKANAMON)が手がけたミディアムチューンだ。歌詞のなかで描かれているのは、夢や目標を抱えたまま動けず、“君”との関係の終わりを受け入れようとしている“僕”の心情。特に〈死んでしまった 言葉たちを全部 人の せいにして また1人 ゆめを見ていた〉から始まるサビの歌唱は、リスナーを一瞬で引き寄せる力に溢れている。濃密な感情を滲ませ、まるで叫ぶように歌いながらも、叙情的な歌心はまったく失われないボーカリゼーションも絶品。このバランス感は、天性のものだろう。
3月24日には「日記」を配信リリース。幾重にも重ねられたビート、美しいレイヤーを描き出すギターのアンサンブルを含め、現代的なポップミュージックのメソッドを活かした楽曲に仕上がっている。激しくも儚いトラックの特性をしっかりと掴み取り、メロディ、歌詞、ビートをナチュラルに融合させるボーカルからは、WONのシンガーとしての資質の高さが伝わってくる。
「日記」と前後して公開されたカバー曲にも注目してほしい。「大キライ」(佐藤千亜妃)は、痛々しいまでに切ない失恋ソング。相手の気に入らないところを挙げながら過ごした時間を回想し、〈他の人を好きだなんて 永遠に 永遠に許してやらない〉と切実な思いを吐露するこの曲をWONは、独特なハスキーボイスを響かせながら、どこまでも生々しく歌い上げている。「恋人ごっこ」(マカロニえんぴつ)のカバーも魅力的。“恋人ごっこ”のような二人の関係をリリカルに描き出す表現力はもちろん、日本語を心地よくグルーヴさせるセンスも素晴らしい。この選曲からも分かるように、WONの音楽的なルーツはおそらく、2010年代以降の邦楽ロックやJ-POP。Ado、yamaをはじめとするボカロ、ネットシーンの系譜とは異なるバックボーンもまた、彼女の音楽性やボーカルスタイルの特徴だ。
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