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Thursday, May 7, 2020

アーティストが実感した「有料ライブ配信」の可能性|秋田魁新報電子版 - 秋田魁新報

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SCOOBIE DO:写真(L to R)オカモト“MOBY”タクヤ(Dr)、マツキタイジロウ(G)、コヤマシュウ(Vo)、ナガイケジョー(B)
SCOOBIE DO:写真(L to R)オカモト“MOBY”タクヤ(Dr)、マツキタイジロウ(G)、コヤマシュウ(Vo)、ナガイケジョー(B)

 新型コロナウイルスの感染拡大防止を目的に、政府が「多数の人々が集まる場所の利用自粛」や「各種イベントの開催禁止」を要請して以降、数多くのライブが中止・延期に追い込まれ、ライブエンターテインメント業界の疲弊が懸念されている。この事態を受けて、「チケット制による有料ライブ配信」を実施する動きが活発化している。今回は実際に有料ライブ配信を行ったアーティストの事例として、ファンクロックバンド・SCOOBIE DOに実施に至るまでの懸念や実際に体験してみての手応えを語ってもらった。

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■活動25周年全国ツアー中止・延期がきっかけで初の有料ライブ配信を敢行

 チケット制ライブ配信サービス「fanistream」を3月19日にローンチしたTHECOO株式会社が、ライブ自粛ムードにある音楽業界を応援する『#ライブを止めるな!』プロジェクト第1弾を3月20日~4月5日に行った。これに参加したアーティストの1組が、今年1月より25周年アニバーサリーイヤーの全国ツアーを展開していたSCOOBIE DOだった。

マツキタイジロウ(G)「2月下旬頃くらいから、バンド内でも『ライブができなくなるかもしれない』という話は出ていました。3月1日の四日市公演までは、“来場が不安な方にはチケットを払い戻す”といった対応で、なんとかライブをやってきたのですが…」

 その後、5月まで決まっていた公演はすべて中止・延期を余儀なくされた。ライブを活動の中心に据えてきた彼らにとって、あらゆる意味でそれは大きな痛手であった。

マツキ「ライブ以外でもバンドとして収益をあげる方法はないかといろんな人に相談していたところ、知り合いのバンドが『ファンクラブをやってみてはどうか』と、THECOOさんが運営しているファンコミュニティアプリ・faniconを教えてくれたんです。『#ライブを止めるな!』プロジェクトを知ったのも、THECOOのスタッフの方からfaniconについて説明を受けたときのことでした」

 実はそれ以前にも「ライブ配信」の実施については、メンバー間で話し合われたことはあった。しかし意見が割れていたという。

コヤマシュウ(Vo)「まあ、乗り気ではなかったのは僕だけだったんですが。実は『#ライブを止めるな』の前にも、『無料でよかったら、ライブ配信をしませんか?』と声をかけてくれた方はいましたが、配信そのものよりも、お客さんがいない状態でライブをやるイメージがどうしても湧かず、そのときはお断りしました。でも、ライブがなくなったことで、3、4月のバンドとしての収入は全くなくなる。今後のバンド運営のためには、有料ライブ配信も1つの手段として考えていこう、ということで話がまとまったんです」

 実施を決めてからの動きは早く、THECOOとの打ち合わせから1週間ほどで3月27日の本番を迎えている。ライブの尺は30分、チケット料金は980円に設定した。

ナガイケジョー(B)「THECOOさんからは『尺は何時間でもいいですよ』と言われていました。ただ、僕も他のバンドのライブ配信をたまに観るのですが、よっぽどのファンじゃないと30分以上は集中力がなかなか保てない。今回はこんな状況なので、なるべく多くの方に見てもらえるように、尺は短く、チケット代は安く設定しました」

 ライブ配信は東京・渋谷のライブハウス「渋谷La.mama」から行われた。

オカモト"MOBY"タクヤ(Dr)「せっかくやるならスタジオなどからではなく、ライブハウスの雰囲気がそのまま伝わるものにしたかった。またライブハウスもこの状況ですごく苦しんでいるので、少しでも還元できればと思い、普段からお世話になっているライブハウスの中から日程的に対応していただけるところを片っ端から当たりました」

■心理的ハードルを乗り越え実感した有料ライブ配信の手応え

 これまで「ライブ配信」への取り組みが積極的に行われてこなかった理由。それは前出の、最も乗り気ではなかったと語るコヤマのコメントにもあるように、アーティスト側の心理的ハードルもあったのかもしれない。では、実際に体験してみての手応えや実感はどんなものだっただろうか。

コヤマ「僕の満足度というか、やっていることはいつもと変わらなかったですね。やはりライブハウスでやれたことが大きかったと思うんですが、バンドでドカーンと生音を鳴らす感じ、ライブハウスに響く感じはすごく気持ち良くて。ただ、こっちが『イエー!』とか煽っても(無観客のため)シーンとしていて(笑)、ウケちゃいかんと思って我慢しましたけど。もしこれがお客さんを入れての配信だったら、全くいつも通りだなと思いました」 因みに、彼らが有料ライブ配信を行ったサービス「fanistream」には、オーディエンスからのコメント機能も付いている。ライブの中止・延期に意気消沈していたファンの喜びは大きく、「うれしい」「元気が出た」といったコメントが多数寄せられたが、ライブ中は、パフォーマンスに集中していたため、画面は見ていなかったという。

コヤマ「もちろんファンとチャットみたいにやり取りしながら、ライブをやるアーティストがいてもいいと思います。ただ僕らみたいなロックバンドは、たぶんファンもそういうのを求めてないと思うし、その辺はアーティストのスタイルによるんじゃないかなと。コメントはライブ終了後にすべて見て、改めてやって良かったなと思いましたね」

マツキ「映像や音響のクオリティやカメラワークがすごくいいというコメントも多かったですね。僕らは当然、ライブ中にはどんな感じで届いているのか観ることはできませんが。あとは楽器の手元のアップとか、ライブハウスでは観られないアングルで観られたことが良かったというコメントもありました」 

■ライブエンタメ体験をアップデートする可能性

 アーティスト側の声としては、多言語対応の電子チケット販売プラットフォーム「ZAIKO」で、初めて有料ライブ配信を行って話題を集めたceroの所属事務所、カクバリズムの仲原達彦氏も、当初は、「ネットコンテンツは無料という風潮がまだまだある中で、チケット代を払って観てくれる人がいったいどれくらいいるのか?」と、オーディエンス側の心理的ハードルを懸念していたという。
ところが、蓋を開けてみれば、ceroの有料ライブ配信の5000枚以上が発券されるなどの大成功を収めた。SCOOBIE DOもまた同様に、想定していた以上の反響と収益があったという。

オカモト「告知期間も短かったのですが、とにかくコアなファンには行き届くようにと、SNSを駆使して告知したんです。きっとファンが拡散してくれたのかな? 初めて僕らのライブを観たという人もけっこういて。また海外からの視聴もあったみたいですね。もの珍しさとか、こういう状況でライブへの飢餓感が高まっていたこともあったとは思いますが。ただ、とにかく配信なら現場に足を運べない人にもライブを届けられるんだということを、実感として知ることができたのは大きな収穫でした」

 この事態が収束して以降、有料ライブ配信をバンドの活動に取り入れていくかどうかについては「これからメンバー間で話し合いたい」ということだが、少なくとも今回チャレンジしてみて初めてわかったことも多く、「ライブ配信」のイメージがポジティブなものとなったのは確かなようだ。

 アーティスト活動を健全に継続させるためには、収益も重要なテーマの1つ。「STAY HOME」が推奨される中、ライブ配信にトライするアーティストは今後ますます増えてくるだろう。適正なチケット価格や告知方法、コンテンツの見せ方なども、知見を重ねることで成熟していくはずだ。新型コロナウイルスは音楽とライブを愛する者すべてを傷つけている。しかしこの苦境を逆手にとった工夫とアイデアが、未来のライブエンターテインメントをより豊かなものへとアップデートさせることを切に願いたい。
(文・児玉澄子)

SCOOBIE DO プロフィール
4人組ファンク/ロックバンド。1995年結成、1999年にインディーズデビューし、2001年に現在のメンバー、コヤマシュウ(Vo)、マツキタイジロウ(G)、ナガイケジョー(B)、オカモト“MOBY”タクヤ(Dr)の編成となる。2006年に自主レーベル「CHAMP RECORD」を設立。圧倒的なライブパフォーマンスと、完全自主運営なインディペンデント精神があらゆる音楽ファンに熱烈な支持を受けている。2015年10月には結成20周年記念ワンマンを日比谷野外大音楽堂にて開催。2019年7月に、通算14枚目のフルアルバム『Have A Nice Day!』をリリース。2020年は結成25周年イヤー。

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