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Tuesday, April 18, 2023

謎のアーティスト「私は人間の意識と体を持つコンピュータ」真意は? - withnews

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チャン氏の楽曲には、著作権フリー・商用利用可の曲を(タイトルだけ付け替え)そのまま使ったインストゥルメンタル、あるいはその曲に声を乗せたポエトリーリーディングの他にも、もう一つ、簡単なコード進行の弾き語りによるポエトリーリーディングもある。特に、近年はこちらに注力しているように見える。

プログラマティックに作られたとみられる楽曲とは趣が異なる。発表しているのがこのような動画だけであれば、“スパマー”“パクリ”という疑いを向けられることもなかっただろう。

記者はチャン氏に「ディープフェイクの技術で動画ですら合成できてしまう時代に、他者の曲を元にプログラマティックな楽曲制作をするあなたは、どうやってあなたのアイデンティティを証明するのか」と尋ねた。

すると、チャン氏は「アイデンティティというのがそんなにも重要とは思わない」と応じた。

「私は、コンピューター技術とAIの発展に伴い、一部の人はますます人工知能に近くなり、一部のコンピューター技術とAIはますます実在の人物に近づくとさえ思っています。おそらく将来的には、コンピューター技術とAIが、実在の人間とより深く、未知の形で統合されるでしょう。

人工知能が実際の人間と同じくらい優れていれば、人々に何らかの助けをもたらすことができます。 そのとき、その助けが実在の人物によるものか、コンピューター技術とAIによるものかを必ずしも知る必要はありません。おそらく将来的には、AIも実際の人間と同じまたは同様の扱いを受けることができるでしょう」

もちろんこれを、グレーゾーンの行為で収益を上げる人物の詭弁と疑う見方は忘れてはいけないだろう。

チャン氏はプログラマティックな音楽制作の正当性に問題をすり替えているとも読めるが、チャン氏が批判されているのは、短期間で大量のアップロードをすることや、他者の曲をほとんどそのまま使っていることだ。

その前提で、日本ではちょうど、ChatGPTといったAIの技術が大きな話題を集めている。ChatGPTは、倫理的な議論を置き去りに、そのあまりの利便性ゆえ、急速に浸透しつつある。

各業界も対応を迫られており、例えば教育現場においては、上智大学が(許可された場合を除き)レポートや論文などにAIが生成した文章やプログラムなどを使用することを認めず、発覚した場合、不正行為として処分することを公表している。

例えば、こうしたAIを使用し、著作権の切れた過去の文学作品をベースに、小説を無数に生み出し、小説投稿サイトに大量に掲載したら……それはスパマーでありパクリだろうか。今後、音楽以外のジャンルでも、同様のことが起きるかもしれない。

このように、人間の役割がテクノロジーやAIに置き換わっていくことは、仕事が無くなるという現実的な問題だけでなく、人間の創造性が失われるという面でも、ディストピアとして受け止められがちだ。しかし、チャン氏はポジティブに認識していることがうかがえる。

著作権フリー・商用利用可の曲を使ったプログラマティックな音楽制作も、著作権のない簡単なギターのコードを使った弾き語りのポエトリーリーディングも、それぞれテクノロジーやAIによる音楽制作、人の手による音楽制作というスタート地点の違いで、チャン氏にとって収束していく先は同じなのではないか。

それはつまり、前述した「たくさんの楽曲を作りたい」という目的である可能性だ。

記者は最後にチャン氏に“Who is Jincheng Zhang?”と聞いた。チャン氏の答えは「Jincheng Zhangは私たちの周りに住んでいるただの普通の人です」だった。

メールの履歴を振り返ってみる。レスポンスはとても早く、ところどころチャットボットを連想させる無機質な表現も見られる。翻訳ソフトを使っていたのだろうか。あるいは、今やメールをChatGPTに“代筆”させた可能性もある。

記者がやり取りしていたのは、人間か、テクノロジーを使った人間か、あるいは、誰だったのだろうか。
 

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