障害児の母親、内木美樹さん(40)=千葉県市川市=が書いた文章に、コンテストで選ばれた障害者アーティストの挿絵を付けた絵本「うちの子には障害があります」(スター出版)が4月に出版される。長男(9)に障害があることを保育園で打ち明け、温かく受け入れられた実話を書いた。内木さんは「自分から一歩踏み出せば、きっと世界は明るくなるというメッセージを込めました」と話している。
内木さんは「誰もが堂々と生きられる社会」を目指し、障害のあるキッズモデルのマネジメント事務所を運営する。絵本では、長男が保育園で友達と合わせられないことに不安を抱え、悩んだ末に「それでも自分たちのことを知ってほしい」「困ったときは助けてほしい」と伝えるため、保護者会で発言した日のことがつづられている。
勇気を振り絞った告白は、保護者や園の先生に温かく迎えられ、このときの感動を広く知ってもらいたいと、絵本にすることを思いついたという。ゆっくり本を読むのが難しい人でも手に取りやすくしたいという気持ちから、大人向けの絵本にした。
原稿を一気に書き上げ、各出版社に送った結果、大阪市のスター出版からの出版が決定。担当者と挿絵を誰に依頼するか相談するうちに、障害者アーティストのコンテストを開くアイデアが浮かんだ。
スター出版が大賞賞金30万円のコンテストを主催。対象の障害者アートの支援団体を通じて呼びかけたところ、全国から48点の応募があり、愛知県豊橋市のKonchi.tさんのイラストが大賞となって挿絵に採用された。
内木さんは、採用作について「かめばかむほど味があるイラスト。私の文そのままではなく、Konchi.tさん自身が感じたこと、体験してきたことを込めて描いてくれたと感じました」という。
文章と挿絵の相乗効果で、深みが増した絵本。「同じように悩んでいる障害がある子の親には、間違いなく絵本のメッセージは届くと思います。お守りのような形で持っていてもらえたら」と願っている。
Konchi.tさんは、20年近くの経験がある障害者アーティストで、今回が初の入賞。極細の黒色ボールペン1本でイメージの湧くまま細密な絵を描く画風だが、原稿に合った挿絵を描くのも初めてで「いい経験になったし、絵を描き続けていく自信になった」と喜ぶ。内木さんが感じた通り、自らの体験も下敷きにしながら、イラストを仕上げていったという。
コンテストは、発表の機会を求める障害者アーティストたちに大きなインパクトを残した。コンテストの案内を受け取った山梨アールブリュットネットワークセンター(YAN、山梨県北杜市)の新田千枝さん(40)によると、展覧会の公募はあっても、より多くの人の目に触れることができる出版物をセットにしたコンテストは見たことがなかったという。
YANからの知らせでコンテストに参加した甲府市のともっちさんは入選は果たせなかったが、「いろんな人の応援があって応募できました。自分が頑張るのはもちろんですが、周りで関わってくれる人たちを大切にしなければいけないと気づきました。この気づきは、受賞しなくても大きな収穫でした」と語った。
スター出版は、今後もコンテストを継続していくという。
◆あすから作品展示
絵本の挿絵と、コンテスト応募作品合わせて約50点を29日から4月15日まで東京新聞本社(千代田区内幸町2の1の4)1階ロビーで展示する。午前10時〜午後6時。日曜日休館。4月1日午後1時から1階ホールでトークセッションを開く。内木さんと電通クリエイティブ・ディレクターの橋口幸生さんが「障害があっても生きやすい社会をつくるために、広告ができること」をテーマに対談する。申し込みは東京新聞Webから(「東京新聞」「うちの子」で検索)。先着50人。いずれも入場無料。
文・水谷孝司/写真・由木直子、水谷孝司
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