※日経エンタテインメント! 2022年4月号の記事を再構成
デジタル化の波が音楽業界にも押し寄せるなか、レコード会社の取り組みにも変化が表れている。では具体的にどのようなことを行っているのだろうか。第2回に紹介するのはネット発アーティストの台頭を前に、新たな形のオーディションを次々に仕掛けているソニー・ミュージックエンタテインメントだ。
「オーディション」は、新たな才能を見つけるために、これまでレコード会社が行ってきた代表的な新人発掘の方法の1つだ。ここでもやはり、個人の発信力が強くなった現在の音楽シーンに合わせた変化が起こっている。
乃木坂46をはじめとした「坂道シリーズ」や「Nizi Project」といったオーディションで、多くの人気者を輩出しているのがソニー・ミュージックエンタテインメント。数多くのオーディションを手掛けてきたSDグループの須藤一希氏は、「ネット発アーティストが台頭してきた頃、オーディションを開催しても、彼らが積極的にエントリーをしてこないことに気づきました。そもそも自分で曲を作れるし、仲間のイラストレーター、クリエーターと協力してジャケットやミュージックビデオまで作ることができる。レコード会社の従来のサポートが求められていなかったんです」と現状を指摘する。
あなたの“セカイ”を世界に
この問題意識から、須藤氏が2020年に開催したのが「Puzzle Project」だ。ネット発アーティストの音楽性・楽曲と私たちのソリューションを掛け合わせ、あなたの“セカイ”を世界に広げるプロジェクトというコンセプトで、「従来のオーディションとは一味違う、アーティストとレコード会社がマッチングする新たな機会になればと」(須藤氏、以下同)考えたという。
第1回の募集期間は20年11月から12月。LINE公式アカウントを立ち上げて自身の活動内容や楽曲を送ってもらうという選考方法で、1600件のエントリーがあった。第1回では10組を選考したが、多くが10代のアーティストだった。「なかには、まだ中学生ながらアイドルへの楽曲提供なども行う“晴いちばん”のようなアーティストも。面談時、お母さんに請求書の作り方を教わっていると話していたのが印象的でした(笑)」。
参加アーティストにはスタジオでのレコーディング、プロによる楽曲のミックス、歌い手とクリエーターのマッチングといったサポートを行う。岐阜県出身のボカロP「なきそ」の『げのげ feat.ロス』はプロジェクト参加後にミュージックビデオと楽曲を配信リリース、現在までに420万回再生となきそ史上最高の再生回数となっている。
22年1月には「ニト。」や「LonePi」など第2弾の参加アーティスト5組を発表。現在も公式アカウントでのエントリーは継続しており、良いと感じたアーティストにはLINEでリアクションを返す。「今までのオーディションでは、あまりなかったやり方ですが、意義のあることだと考えています。今、10代のクリエーターは自分たちで立ち上げたDiscordのサーバーで、ボカロP、イラストレーター、歌い手などが集まって情報交換をしているそうです。こうした場で、Puzzle Projectが有益なサポートを得られる場として話題にしてもらえたらうれしいです」。
TikTokとの連携も
続く21年にはTikTokとともに「♯アトリエプロジェクト」を立ち上げた。「クリエーター同士のつながりが薄い」という悩みを抱えたTikTokのクリエーターが多いことから発足したもので、「TikTokオーディション2021」と連動させて、参加メンバーを募集。現在は15組のイラスト・映像・音楽系クリエーターらが所属しコラボ作品の制作をサポートしている。参加アーティストの「4na」(シーナ)が1月に公開した新曲『白魔法』では、同じく参加クリエーターの「ミラソブ」が映像を担当。優しい曲調に合わせてこれまでにないタッチの作品となるなど、コラボならではの効果も生まれている。
須藤氏はレコード会社とオーディションの未来をこう語る。
「今後は、オーディション番組ではない形で、アーティストを育成・発掘できるコンテンツを作れれば面白いなと考えています。そのコンテンツに出た人たちがみんな成長しブレイクしていくもの。そうすると出たい人が集まってくるので、結果的に発掘にもつながりますよね。いろいろな新人が日の目を浴びる機会をたくさん作っていければと思っています」
からの記事と詳細 ( ソニー ネット発アーティストの“セカイ”広げるプロジェクト - 日経クロストレンド )
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