梅雨時に洪水や土砂崩れが頻発し、大きな被害が出ている。防災情報を有効活用し、被害を防ぐ行動に役立てたい。
近年、豪雨の要因として「線状降水帯」が注目されている。積乱雲が次々と発生して、長時間、同じ場所に大雨を降らせる現象だ。昨年7月の九州豪雨や、2018年の西日本豪雨などをもたらし、多数の死者が出た。
気象庁は6月中旬から、線状降水帯について、「顕著な大雨に関する情報」の発信を始めるという。雨雲の状況や降雨量を素早く捉え、線状降水帯の発生が確認された場合に発表する仕組みだ。
地球温暖化の影響もあって、線状降水帯による豪雨被害は大きくなっている。台風情報と同様に、住民に早めの警戒を促す効果が期待できるだろう。
ただ、新情報の名称には肝心の「線状降水帯」という言葉が入っていない。豪雨の際に以前から発表されている「記録的短時間大雨情報」との区別もつきにくい。
簡潔でわかりやすい発信の方法を検討してもらいたい。
線状降水帯は、東シナ海などから暖かく湿った空気が流れ込む西日本で発生する場合が多い。しかし、海上の観測体制は手薄で、急速に発達する積乱雲の動きを的確に予測するのは困難である。
本来は、半日ほど前に予報できるようにすることが理想だろう。気象庁は、観測船を増やすなどして観測網を強化し、精度の高い予報の確立に努めるべきだ。
防災情報の伝え方は難しい。19年の台風19号では、気象庁が、1958年に東海・関東地方に大きな被害をもたらした狩野川台風を例にあげて注意を呼びかけたものの、一部で「ほかの地域は大丈夫だ」と誤解されたという。
市町村が避難を求める「避難勧告」と、より強い「避難指示」も、違いが理解されにくかった。政府は5月から「勧告」を廃止して、「指示」に一本化した。
予報の精度が高まり、情報が細かくなるほど、かえって「指示されるまで逃げない」という心理が強まりやすい。今年は、九州から東海にかけて異例の早さで梅雨入りした。豪雨被害への警戒を怠らないようにしたい。
日頃からハザードマップなどで自宅や地域の危険度を確認し、必要なら自分の判断で早めの避難行動を取ることが大切だ。
自治体が決めた公民館や学校への避難だけでなく、知人宅やホテルに泊まるといった柔軟な方法も考えておいてほしい。
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