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近年、ジェンダーや人種、民族、信条などさまざまなアイデンティティーの不均衡を正し、ダイバーシティーを重視する動きが世界中で拡大しており、こうした潮流に重なるようにして、現代アートの世界でも、50年以上にわたって制作を続けてきた世界各地の女性アーティストたちが評価され始めている。森美術館で2021年9月26日(日)まで開催中の『アナザーエナジー展:挑戦しつづける力ー世界の女性アーティスト16人』は、そんな女性アーティストたちにフォーカスした貴重な展覧会だ。
参加アーティストはエテル・アドナン、フィリダ・バーロウ、アンナ・ボギギアン、ミリアム・カーン、リリ・デュジュリー、アンナ・ベラ・ガイゲル、ベアトリス・ゴンザレス、カルメン・ヘレラ、キム・スンギ、スザンヌ・レイシー、三島喜美代、宮本和子、センガ・ネングディ、ヌヌンWS、アルピタ・シン、ロビン・ホワイトの16人で、全員70代以上、最高齢はなんと106歳。50年以上制作を続けているベテランのアーティストたちばかりだ。
会場に入ってまず目に飛び込んでくるのは、工業用材料を用いた作品で知られるフィリダ・バーロウの『アンダーカバー2』(2020年)。セメントの塊や布が21本の鉄の脚で支えられた迫力満点の彫刻作品で、カラフルな色合いも相まって本展覧会のオープニングにぴったりの作品と言える。
続いて登場するのは、ブラジルの作家アンナ・ベラ・ガイゲル。ブラジルの政治的な混乱を体験したガイゲルは、版画やコラージュ、アッサンブラージュなどの媒体を横断しながら、政治的な問題に思考を巡らせている。その作品は地理学や地政学に裏打ちされており、どれも知的な雰囲気を醸し出しているのが印象的だ。
ミリアム・カーンの作品は、差別や戦争などの社会問題や、ユダヤ人女性としての作家自身のアイデンティティー抜きに語ることはできない。木炭や油絵具で描かれた作品は、色彩豊かで幻想的でありながらどこか不安を感じさせ、強い情感をもって観る者に迫ってくる。
最後の部屋を飾るのは、三島喜美代だ。三島は高度経済成長期の日本で、「どんな情報も読み終わった途端に全部ごみになる」と考え、新聞やチラシを陶にプリントした立体作品を作り始める。部屋の中心にうず高く積まれた陶器製の雑誌の山は、まさに圧巻。「ごみを一生懸命作っている」と語る三島の姿には、作家としての信念と覚悟を感じさせる。
また、会場には作品解説とともに作家のインタビュー映像も流れている。彼女たちが現在注目を浴びているのは、その実践や人生の中にフェミニズム、移民の歴史などの問題や数々の事象が見えてくるからだけではない。そうした背景が見えるようになっているのは、アートマーケットや時代の変化にとらわれることなく、彼女たちが独自の創作活動を続けてきたからこそだ。
なぜ彼女たちは長きにわたって制作を続けているのか。彼女たちを制作に駆り立てる「アナザーエナジー」は何なのか。その作品や言葉から、挑戦し続けることの大切さを学び取ることができるかもしれない。
テキスト:柴田悠
『アナザーエナジー展:挑戦しつづける力ー世界の女性アーティスト16人』の詳細はこちら
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