社説
LINEの情報管理 利用者目線で信頼できる体制
2021年3月28日(日)(愛媛新聞)
無料通信アプリLINE(ライン)の利用者の個人情報が中国から閲覧可能になっていたことが分かった。LINEが開示しているデータ運用指針には中国からのアクセスが明記されておらず、利用者に情報漏れの不安が広がっている。
LINEは日本国内で8600万人超が利用し、日常の連絡手段として浸透。自治体や企業の情報発信にも使われ、社会インフラとなっている。個人情報や重要な公的情報の管理にどんな不備があったのか、実態解明が欠かせない。LINEは信頼回復に向け、利用者目線で問題の再発防止を図るべきだ。
LINEによると、開発業務の委託先である中国の関連会社から、日本国内のサーバーに保管された利用者の名前や電話番号などが閲覧できた。また、韓国にあるサーバーには投稿された動画や画像のデータが保管されている。情報の漏えいは確認されていないという。
中国の関連会社の技術者4人が2018年夏ごろから、日本国内のサーバーにアクセスできる状態だった。4人は少なくとも32回アクセスしていたことが確認されている。中国の国家情報法では、企業は国家の要請があれば情報を提供する義務がある。関連会社を通じてデータが当局に吸い上げられるリスクがあり、利用者が不安を覚えるのも無理はない。
LINEの運用指針は、データを第三国に移転することがあるとしているが、具体的な国名は記載していなかった。利用者への説明不足は明らかだ。政府の個人情報保護委員会は昨年6月の改正個人情報保護法の成立に伴い、データ移転先の国名を規約などに明記するよう求めている。LINEの対応に法令違反がなかったかどうか詳しく調べるべきだ。
利用者の不安解消へ、LINEは中国からの個人情報へのアクセスを完全に遮断。韓国で保管しているデータは国内に順次移転する。運用指針にはデータ移転先の国名や目的を明記するという。ただ、こうした指針や規約は説明が膨大で分かりにくいことが多い。利用者感覚に配慮し、なるべく簡潔な形にすることも重要ではないか。
今回の問題を受け、政府や自治体がLINEの利用を停止するなど影響が広がっている。LINEは今月1日、ヤフーを傘下に持つZホールディングスと経営統合。インターネットサービスで国内最大級のIT企業を目指しており、社会インフラとしての役割も増している。その自覚を持って、情報管理を徹底する必要がある。
LINEに限らず、IT分野ではコスト削減や人材確保を目的に、開発業務の海外委託が広く行われている。個人情報を含むデータの流通量が増える中、利用者保護は企業にとって重大な責務だ。デジタル化を推進する国も、情報管理のルール整備に向けた取り組みを強化しなければならない。
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