デジタル教科書の本格導入を巡り、文部科学省の有識者会議が中間まとめ案で示した論点について、識者の見方を交えて検証する。
紙とデジタルを組み合わせた指導法を模索している中学校が、東京都にある。
荒川区立第三中学校は昨年12月、3年理科の授業を学校図書館で行った。生徒は、司書が薦める太陽系の惑星に関する約50冊から興味のある本を選び、端末で最新の話題を検索した。真偽の不明な情報は避け、研究機関のサイトなどを閲覧し、難解な用語は書籍で意味を確かめた。
次の授業で、生徒らは自分を惑星に見立てて特徴を紹介した。「他の惑星にもリングはあるが、おいらのが一番壮大」(土星)といった具合だ。小柴憲一校長(58)は「役に立つ情報を集めるため、書籍と端末の併用は効果的だ」と語る。
教科書や書籍を基本とし端末も活用する方針は、清水隆彦・前校長(66)が進めた。数年前、全生徒に端末を配ったが、ノートを取る時間が少なく、理解が深まっていなかったためだ。清水さんは「紙とデジタルは、適材適所で使い分けるのが大切だ」と指摘する。
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端末を活用した学びについて、スウェーデンの精神科医で「スマホ脳」(新潮新書)の著書があるアンデシュ・ハンセンさん(47)は「端末を学習目的の情報集めに使うのは有効だ」と評価する。ただ、デジタル教科書の本格導入は「やめた方がいい」と明言した。
根拠として、様々な国の研究で「画面より紙の方がじっくり読むことができ、内容が頭に入りやすいことが分かっている」ことを挙げる。ハンセンさんは「紙の手触りや、本のどこに書いてあったという記憶と絡めて覚えやすいのではないか」とみている。
また、端末で学ぶ多くの子供は深く理解せずに「分かったつもり」になってしまうとして「難しい文章や複雑な課題を理解するには、紙に手書きする作業が欠かせない」としている。
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教育評論家の尾木直樹さん(74)も「1人1台の端末を調べ学習に有効活用するのは賛成だが、十分な検証をせずに教科書までデジタル化するのは危険だ」と警鐘を鳴らす。
文科省の中間まとめ案では、端末の方が荷物が軽くなることなどをメリットに挙げたが、尾木さんは「本質は子供の学習への影響だ。重さの問題を解決する手段は他にもある」と語る。
尾木さんは「デジタル教科書を本格導入後に『効果がなかった』という結果が出ては取り返しがつかない。国は拙速に進めず、海外の先行事例を慎重に分析するべきだ」と強調した。
からの記事と詳細 ( 役立つ情報の収集、書籍を基本に端末も使うのは効果的…[デジタル教科書を問う]中間まとめ案<上> - 読売新聞 )
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