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放置された女児が死亡したマンション(東京都大田区)
幼い命がまたも失われた。東京都大田区で起きた3歳女児衰弱死事件で浮上したのは、乳幼児健診を受けていない子供をどうフォローするかの問題だ。虐待の恐れがあるとみて安否確認に力を入れる自治体がある一方、兆候が見逃されるケースがある。悲劇を繰り返さぬため、検証が急がれる。(嶋崎雄太)
横浜市の乳幼児健診の会場で、1日の受付業務を終えた担当職員が児童の名簿を不安そうに眺める。「この子たちは大丈夫だろうか」。チェックがついていないのは、予定日に姿を見せなかった子供たちだ。
未受診の家庭にはすぐに受診を促す通知を送り、日時を変え複数回電話する。つながらない場合などは曜日や時間帯を変えて最低2回、保健師らが家庭訪問する。入国管理局に出国履歴を照会する場合もある。近年、安否が確認できなかった子供はいない。
市が未受診児の追跡に力を入れるきっかけは、2013年に市内で発覚した虐待事件だった。当時6歳の女児が母親の元交際相手に暴行され死亡し、雑木林に遺棄された。転居を繰り返し小学校にも通っていなかったが、市は状況を把握できていなかった。「連絡の取れない子供を放置すれば命に関わる恐れがある」。担当の丹野久美課長は強調する。
1歳半と3歳の乳幼児健診は母子保健法で受診が義務づけられている。遠方の実家や海外での子育てなどを理由に未受診となるケースもあり、18年度の全国の受診率は1歳半児が96.5%で、3歳児が95.9%。未受診児はそれぞれ約3万4千人、約4万2千人いた。
虐待事件の増加を受け、母子保健法には16年の改正で「(健診などが)虐待の予防及び早期発見に資するものであることに留意する」ことを地方自治体などに求める条項が加わった。国は目視による子供の状況確認を推奨しているが、対応策の統一ルールはない。児童相談所などと情報が共有されず、予防に生かせなかったケースは相次ぐ。
19年6月には仙台市内のアパートで、母親に数日間1人で放置された2歳の長女が低体温症で死亡した。長女は4カ月健診を最後に法定健診を受けず、市は書面や電話で連絡を試みたが接触できなかった。郡和子市長はその後の記者会見で「会って話すのが難しい家庭に支援が行き届くよう努めないといけない」と述べた。
大田区の事件でも、死亡した梯(かけはし)稀華(のあ)ちゃん(3)は19年12月の3歳児健診を未受診だった。受診を促すため区職員が自宅マンションを訪ねた5月11日、稀華ちゃんは室内にいた可能性があるが、気付かなかった。
区は「検証を始めている」とする一方、詳しい状況を明らかにしていない。自治体関係者は「市区町村によってマンパワーは異なり、未受診時の対応は地域差が生まれやすい」と話す。
各地で自治体と児相、警察などが情報を共有する要保護児童対策地域協議会(要対協)が定期的に開かれている。大田区の事件では児相と警察は稀華ちゃんの状況を把握しておらず、情報共有のあり方が問われる。
元児相職員で「子どもの虹情報研修センター」(横浜市)の川崎二三彦センター長は「未受診の情報を虐待防止に生かすためには、親の人間関係や生計といった他の情報と組み合わせて分析することが必要だ。地域や民間も含めた情報共有ネットワークの強化が求められる」と指摘している。
警察庁の統計によると、2019年に全国の警察が検挙した児童虐待事件は1972件で、被害に遭った児童は1991人に上った。いずれも過去最多を記録し、死亡した児童も54人いた。
端緒となる児童相談所への通告件数も急増。厚生労働省によると、18年度に全国212の児相に寄せられた相談や通告は約16万件だった。同省は虐待への社会的関心の高まりなどが背景にあるとみている。
通告が増える一方、対応に追われる現場では人員の逼迫が深刻化する。18年3月に東京都目黒区で両親から虐待され、女児(当時5)が死亡した事件では、転居前後の児相間での引き継ぎが不十分だったとされる。
事件を受け、政府は児相の体制強化を進めている。22年度をめどに、児相で虐待対応にあたる児童福祉司を約2千人増やして5260人とするなどの目標を掲げる。
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July 19, 2020
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救えなかった3歳の「未受診児」 情報共有のあり方は - 日本経済新聞
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