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Tuesday, June 9, 2020

「新型コロナは米国の生物兵器である」習近平の情報工作が日本にも迫っている - 時事通信

 新型コロナウィルス感染症(COVID-19)について、情報戦が激しく繰り広げられている。

「新型コロナのウィルスがどこで発生したのか」「この感染拡大の原因は誰にあるのか」などに関連した情報が、SNSやメディアを通じて今も飛び交っているのだ。こうした情報戦にかなり力を入れているのは新型コロナの発生源である中国で、中国発の情報によって国家同士が争うような事態にもなっている。

 今回、中国の情報工作やプロパガンダはとにかく徹底しているように見える。中国政府は何がなんでも自分たちの責任を回避しようとしている――そのように思えてならないのだ。その実態からは、中国政府の脅威を再確認させられる。

中国国営TVが流した“米軍生物兵器説”

 例えば最近、こんな報道が話題になった。中国国営TV局の中国グローバルテレビジョンネットワーク(CGTN)のアラビア語版が、とんでもない“ニュース”を視聴者たちに放送していたのだ。それによると、2019年9月に何人かの日本人がハワイで新型コロナに感染し、その後には米軍の生物兵器研究所がなぜか封鎖されたという。さらにオンラインからは、その研究所の情報も消えていた……。

習近平国家主席 ©AFLO

 つまり、新型コロナは現在考えられているよりも前から発生し、しかもそれは米軍の生物兵器だったと示唆する内容だ。

 もちろんこの話は事実無根で、そのニュースの中でもなんら根拠は示されていない。それでも海外向けの国営TVを使って、米国と日本が最初にこのウィルスを広めたと印象付けようとしているのだ。アラビア語は世界で3億人以上が使う、世界第5の使用者数を抱える言語である。アラビア語圏にこうした情報を広めることで、実際にそれを信じてしまう人が出てくる可能性も、決して否定できない。

中国大使館のツイッターでは……

 また、中国は今回、大使館を通じた“工作”も行っている。

 世界の中国大使館や領事館で100以上のツイッターアカウントを活用しており、在日の中国大使館も、中国国内では使用禁止になっているツイッターの公式アカウントで、「COVID-19ウィルスについて米国による24のうそとその真相」という動画を5月15日から8回にわたって掲載している。

 その動画では、「最近、米国の一部の政治屋とメディアは米国内の新型肺炎の感染への対応が不十分なことに対する人々の関心をそらし、中国に責任をなすりつけようと、常軌を逸したさまざまなうそを言い続けている」と嘯いている。

 

「偽情報を流布するロシアの戦略を使っている」

 また、新型コロナが漏れたのではないかと指摘されている武漢のウィルス研究所の所長や研究者が中国国営TVのインタビューに応じて、新型コロナと研究所は無関係であるとも語っている。しかし、研究所などのスタッフは政府の厳しい監視下に置かれているので、客観的なインタビューなどそもそも不可能で、結局は、政府の思惑通りのコメントを続けていると見られている。つまり、情報工作に駆り出されているのである。

 さらに最近では中国政府系のSNSアカウントなどが、ロシア政府系のTV局であるRT(ロシア・トゥデー)の反米報道をどんどんリツイートして利用している。RTもまた、今回の新型コロナは米国が発生源であると報じており、「新型コロナは米国が計画したものである」といった具体的な発言もトーク番組などで放送している。それを中国が拾って、拡散させているのだ。

 もともとロシアは2016年の米大統領選挙で、米国に大々的な情報戦を仕掛け、トランプの勝利に貢献したと分析されている。米シンクタンクのブルッキングス研究所は「ロシアが行ってきた偽情報を流布する戦略を、いま中国が使っている」と、中国の情報工作について指摘している。

「習近平は無能」と感じ始めた国民

 筆者の取材に米諜報関係者は、「中国は今、ロシア以上にプロパガンダ活動を大規模かつ活発に行っている。新型コロナの発生について自分たちの責任は回避できないという焦りから、なりふり構わず情報工作を行っていると言える。なんとか自分たちの責任を逃れようとしているのだ」と語る。

 さらに「中国は、対外的なイメージ悪化が、結局は国内情勢をも悪化させる可能性があると警戒している。これは、習近平国家主席の立場すら危うくなりかねない事態だと考えていい。

 中国国内でも、習近平が対応に苦慮している米中貿易交渉や、通信機器大手ファーウェイなどの中国企業に対する米国の措置、米英などにいる中国の研究者・留学生などにも悪影響が及んでいたりと、国民や共産党員の中には『習近平はリーダーとして無能』と感じる人たちが増えつつあるはずだ。そんな声は封じられて表には出てこないと思われるが、習近平には焦りがあるだろう」とも述べている。

 

アメリカの中国批判も激化している

 習近平が力を入れてきた対外イメージの向上についても、国内から懸念が出ている。中国の諜報機関である国家安全部(MSS)につながりのある政府系のシンクタンク、中国現代国際関係研究院が、最近、習近平のためにまとめたリポートによると、新型コロナによって中国に対する国外からの敵意が高まっており、1989年の天安門事件以降で最悪の状態になっていると警告されている。

 一方、米国側もまた、トランプやマイク・ポンペオ国務長官などがツイッターやインタビューで繰り返し中国を批判している。その声は世界中に届いているが、それだけではない。例えば国内では、米共和党の議員や候補者らは、今年の大統領選と議会選挙に向けて、新型コロナの混乱の責任は中国にあると明確にさせるために、SNSで広告を打っている。

 トランプは新型コロナによる経済の停滞や溢れる失業者の責任を中国に厳しく向けることで有権者の支持を固めようとしているが、共和党はSNS広告で結果的にそれを支えているのだ。

“中国叩き”は大統領選勝利への鍵

 最近の米調査機関ピュー研究所による意識調査では、米国民の66%が中国を否定的に見ていることが判明している。また71%が習近平を信用できないと答えており、62%が中国の影響力を大きな脅威だと見ている。

 もっと言うと、トランプが大統領になってから、米国人の中国に対するイメージは20%近く悪化している。これは、トランプと中国強硬派の側近たち(ピーター・ナバロ大統領補佐官やウィルバー・ロス商務長官、さらに国家安全保障問題担当のマット・ポッティンガー副顧問など)の思惑通りである。

 対中嫌悪感によって、新型コロナ感染拡大の全責任を中国に向けようとするトランプ政権の情報戦がうまくいっているのだ。そしてトランプは、中国叩きが大統領選勝利にも重要な要素になると考えている。

 新型コロナをめぐる情報戦は、こうした米中それぞれの思惑を背景に、今後もさらに激化していくだろう。

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June 10, 2020 at 04:00AM
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