近年、生体分子などの小さなシステムで、情報という抽象的な概念を考慮する必要性が盛んに議論されています。代表的な例はマクスウェルのデーモンと呼ばれる考え方であり、この考え方によると情報という概念も熱力学的なリソースとみなせるとされてきました。一方で、この情報という概念が熱力学的な観測量とどう関連し影響し得るかについては、現在に至るまで深く考察されてきませんでした。
今回、東京大学 理学系研究科の伊藤 創祐 講師と京都大学 Andreas Dechant 研究員は、確率過程で記述されるダイナミクスに情報幾何学の視点を加えることで、熱力学的な観測量の変化速度と、「フィッシャー情報量」などの情報の抽象的な概念を結びつけることに成功しました。また観測量の変化速度に関する新たな熱力学的な限界を発見し、生体システムにおいて隠れた自由度を検出する方法を提案しました。
有限の熱コストで機能している生体システムにおいて、この熱力学的な限界が情報処理速度に影響している可能性があるため、今後本結果を通じて生体システムの熱力学的な理解が進むと期待されます。
本研究成果は2020年6月15日(米国東部夏時間)、国際科学誌「Physical Review X」に掲載されました。
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June 17, 2020 at 12:03PM
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共同発表:情報による観測量の変化速度の熱力学的な限界を発見 - 科学技術振興機構
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