ニュースサマリ:2019年10月22日、AIを用いたメディアモニタリングとマーケティング・インテリジェンスをのツールを提供する「Signal AI」は、シリーズCで2,500万ドルを調達し、総調達額が4,950万ドルに到達した。本ラウンドは、Redline Capitalがリードを担当し、MMC Ventures、GMG Ventures、Hearst Venturesなど既存の投資家が参加した。
Signal AIは50言語200カ国、500万件/日の記事、ニュース、出版物と規制データをモニタリングして、ビジネスマンや経営層が目を通すべき情報とインサイトを提供する。
今回の資金はインサイトを用いた新規事業と、米国での成長とアジア太平洋地域市場での立ち上げに使用される。
話題のポイント:“AI is the future of PR”と主張するSignal AI。彼らはAIを用いてPRをどのように変革しようとしてるのでしょうか。
メディアモニタリング、マーケットインテリジェンスを展開するSignal AIですが、コア技術は「検索」です。つまり実態は、ビジネスマンの中でも特にPRパーソンに特化した検索サービスと言えます。
社会動向を効率的に調査するための検索ノウハウを持つ人は多くありません。良質な意思決定を支える情報をリアルタイムに取得するのは現状困難です。
この点において、「キーワード検索」でいたずらに増えたコンテンツをさばききれていない問題が挙げられます。
従来、アドセンスのビジネスモデルは様々な質のコンテンツを量産してきました。なかでも間口の広い、検索上位に食い込むような、バズコンテンツを幅広く配信するサイトが乱立。ニッチなコンテンツを配信するサイトは希薄に見えます。
もちろん、初心者向けのサイトを必要としている人がいるでしょう。ただ、人によって要求するコンテキストレベルは大きく異なるにも関わらず、ニッチコンテンツに行きつきたいというユーザー需要に「キーワード検索」は対応することができていません。
そこで、少しでも望む情報を探り当てるためによく用いられるのが「ブーリアン検索」です。様々なキーワードをあらかじめ設定しておいて、条件に合う情報だけを取得してくる検索方法です。
下図は、ブーリアン検索の一例です。“Amadeus”という企業が以下の単語が含まれていたら情報を取得しないための条件文となります。
留意しなければならないのが、これは企業名に関する条件文のみであり、関係するキーワード(プロダクト別、競合他社など)ごとに条件文を構築する必要があるということです。見ていただければ分かる通り、とても煩雑で精度を上げるのも一筋縄ではいかず、構築・維持に大きなコストがかかります。
Signal AIはこうした問題を解決するため、膨大に増えたコンテンツの中から内容と人をマッチングする検索「エンティティ」を提供しています。
ソフトウェア設計上で用いられる“エンティティ” = “実体”とは、たとえば「コーヒー」であれば、「品種」「産地」の属性と、「焙煎」「ブレンド」「ドリップ」という操作から成り立ち、これらをある程度手動で記入していきます。
対してSignal AIでは、組織・イベントなどをエンティティとして認識し、世界でどのように記述または話されているかを自動で学習して「Apple iPhoneは食べられず、リンゴはタッチスクリーンではない」という認識を作り出します。そのため、Appleでメディアの報道を検索したい時に、果物のリンゴに関する記事は表示されません。
エンティティを用いるメリットを以下にまとめます。
- 感情を計算することで肯定的または否定的なメディア報道を受けているか
- 異なるエンティティ間の関係を検出することでより詳細なインサイトを引き出す
- 新しい記事を読むたびに精度が上がる
つまり、Signal AIが目指すAIがPRを変革する方法とは、「情報収集能力の飛躍的向上で、打ち手に集中できる環境を作る」というものです。さらに、インサイトを用いて、コンテンツ配信立案の補助ツールの提供も始めています。今後はこの点を更に強化していく方針です。
情報は勝負を決定づけるものではありませんが、優位性を作るためには欠かせないものです。
PRやマーケティング・インテリジェンスを生業とする人の施策前提には、ターゲットの人物像の解像度が高い必要があります。同じ特性を持つ人物に対しても、時代が異なればアプローチが違うのは当然です。
そこで効率よくターゲットユーサーに関するあらゆるトレンドを取得できるようなサービスを提供するのがSignalAI。AIを活用した新たな検索手法で、本当に必要な情報へアクセスする場を作り出しました。
SignalAIの登場は、情報戦が国を跨いで年々激化する中、情報を取りこぼさないツールが普及することを意味します。これは情報格差が付加価値とならない新しい時代の突入と言えるかもしれません。
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February 19, 2020 at 06:15AM
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