障害も個性と言えるような世の中に…
- 2023年12月25日
障害のあるアーティストを支援するカフェ
福岡市中央区にあるこちらのカフェ。
連日若い女性を中心に、数多くの客が訪れています。目を引くのは、壁に飾られた色とりどりの絵画です。アイドルとして活動した経験があるオーナーがカフェを始めたきっかけは障害のある弟。いったいどんなカフェなのか。オーナーが弟から受け取ったメッセージとは?
(福岡放送局 アナウンサー 小林将純)
障害のあるアーティストを支援するカフェの工夫
カフェを彩る絵画。作品の約半分は障害のあるアーティストが手掛けたものです。
健常者が手掛けた作品と一緒に並べられていて、敢えてどちらがどの作品を手がけたのかを明示していません。絵画は展示だけではなく、販売もされています。
これまで30人のアーティストの作品が展示・販売され、そのうち半分以上が障害のあるアーティストの作品でした。
障害のあるアーティストが手掛けた作品だと知らずに、絵画を気に入ったという利用客は…。
色合いがすごく綺麗!あまりこういう絵を見る機会がないからすごく素敵!
また、カフェのメニューの一部の売り上げは、作品作りに役立てられます。
カフェで購入したケーキをデコレーションできるカラフルな砂糖菓子や誕生日ケーキに使うようなろうそくの売り上げが、全て、障害のあるアーティストが画材を購入する費用にあてられます。
障害者を支援するこのカフェを始めたのが、オーナーの山木彩乃さんです。
障害者も健常者も一緒に作品を展示・販売する仕組みにしたのには、理由がありました。
福岡で頑張ってアーティスト活動している健常者の方々もたくさんいるので、その方と同等に並べて、本当の意味で障害という固定観念を覆すカフェにしたい。
障害のある弟に救われた山木さん 今度は私が応援したい
カフェをオープンしたきっかけは、山木さん自身が障害者に救われたことでした。
幼い頃からアイドルになるのが夢だった山木さん。
10代で故郷を離れ、福岡でアイドルとして7年間、必死に活動をつづけました。
しかし、限界を感じて22歳で引退。
芸能活動に専念してきたため、他の業種を知らなかった山木さん。
セカンドキャリアの壁の高さを感じ、どう乗り越えていけばいいのか悩んだと言います。
山木さんは、その後、うつ病と診断されました。
そんな山木さんを救ってくれたのは、年の離れた弟・勇輝さんでした。
自閉症で意思の疎通が難しかった勇輝さん。
山木さんは療養中、実家で過ごすことになり、勇輝さんと過ごす時間が増えたと言います。そうした中、あることに気づきます。
勇輝さんは、絵を描くのが大好きで、作品を通して自分を表現していました。
そんな勇輝さんの姿を見て、山木さんは前向きになれたと言います。
そして、弟のように障害があっても自分らしく生きている人たちを応援したいと思うようになったと言います。
いろいろな方がいる中で弟だけを支援してもらうとか、弟だけの作品を買ってもらうとか、本当に自分がそれだけでいいのかなと考えるようになった。
本当の意味で世の中を変えていくというか、少しでもそういうきっかけになれることをしていきたいと思うようになった。
アーティストの「個性」に価値を!
取材した日、障害のあるイラストレーターがカフェを訪れました。
新作の絵を納品するためです。
アイドル時代、どうやって自分を応援してもらうかを考えてきた山木さん。
いまはどうすればアート作品のファンを増やすことができるか、日々考えていると言います。
作者と相談しながら、絵を飾る場所を決めていきます。
光の当たり具合にもこだわります。
さらに、カフェに来た利用客に作品を紹介するため、デザインに込めた思いや背景を聞きだし、作品からにじみ出る個性を見つけていきます。山木さんは、この日納品された新作と以前の絵を見比べて、ある共通点を見つけました。
作品にいつも出てくる子は男の子ですか?女の子ですか?日によって違う?
常に目をつぶっている人を描いていて…
ずっと気になっていて。…ということは、男女も関係ないし、どんな人に見えてもその人次第みたいな感じ?
そうそう!
山木さんは、障害のあるなしではなく、アーティストの「個性」に価値を見出してほしいと考えています。
「障害者ということに甘えちゃいけない。私自身もアーティストさんも。世の中にはいろんな人がいるんだよということを、作品を通じて表現していって、障害も個性と言えるような新しい世の中になっていけばいいなというのが一番の私の目標です」
取材を終えて
障害のあるなしではなく、作品を魅力的に見せる。そのために、人を見ていく。アートの魅力や作者の個性を引き出そうとする、山木さんの姿が印象的でした。
「障害も個性と言える世の中に」。山木さんのように、周りの人たちの意識や心掛けがそうした社会を作っていくきっかけになるかもしれないと感じました。
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