Pages

Sunday, October 29, 2023

自然か人工か、既存の価値観揺さぶるアーティストが素材を語る - 日経クロストレンド

bintangsef.blogspot.com
素材×マーケティング 第2回

木材から節を削り出した椅子、ごみと自然物を溶かして作った人工石を集めた標本。21_21 DESIGN SIGHTで開催中の企画展「Material, or」のイベントに、オランダにゆかりのあるクリエイターの太田翔氏と本多沙映氏が登壇。自然と人工、リアルとフェイクといった価値観を揺さぶる作品を生み出している二人の言葉から、素材の新たな価値を探る。(進行は「Material, or」企画チームの山田泰巨氏)

太田翔氏と本多沙映氏(撮影/名児耶 洋)

(撮影/名児耶 洋)

太田 翔(おおた しょう)氏(左)
デザイナー/アーティスト

千葉大学工学部デザイン科意匠系卒業。同大学院同研究科修了後、日進木工に入社。2018年にオランダ・アイントホーフェンの「Design Academy Eindhoven(デザイン・アカデミー・アイントホーフェン)」の大学院を修了し、同年「Studio Sho Ota」を設立。オランダを制作拠点にパリとアムステルダムのギャラリーから作品を発表している

本多 沙映(ほんだ さえ)氏(右)
デザイナー/ジュエリーアーティスト

2010年に武蔵野美術大学工芸工業デザイン学科を卒業し、IDÉE(イデー)に入社。13年からアムステルダムの「Gerrit Rietveld Academie(ヘリット・リートフェルト・アカデミー)」のジュエリー学科で学び、16年に卒業。国内外でジュエリーやアート作品を中心とした作品を発表するほか、コミッションワークも手掛けている。作品はアムステルダム市立美術館、アムステルダム国立美術館、アーネム博物館に永久所蔵

――太田さんは工業的に処理された木材の表面を彫り、枝の痕跡である節を浮き立たせた「According to the Grain(アコーディング・トゥ・ザ・グレイン)」のシリーズを、本多さんはフェイクファーを題材に、その製造現場である和歌山のフィールドリサーチからスタートした作品「Cryptid(クリプティド)」を出展されています。

太田 翔氏(以下、太田) 木の節は彫ると下に枝がつながっていることが分かります。枝を木の肉の部分が食べてしまって節になっているんですが、そういった木自身が若いときに枝があった部分を外に出してあげて、木のもともとの構造を見せるという作品です。

太田翔「According to the Grain: Coat rack(アコーディング・トゥ・ザ・グレイン: コートラック)」。平らな木材の表面から12ミリメートル削り、節を浮き出すように彫り出して制作。板材になって人間が扱いやすいようになったものに対し、もう一度その中に眠っている野生の部分を掘り起こすような作品。触れることでも素材を感じ、体験し、鑑賞できる(撮影/Yuta Sawamura、画像提供/21_21 DESIGN SIGHT)

太田翔「According to the Grain: Coat rack(アコーディング・トゥ・ザ・グレイン: コートラック)」。平らな木材の表面から12ミリメートル削り、節を浮き出すように彫り出して制作。板材になって人間が扱いやすいようになったものに対し、もう一度その中に眠っている野生の部分を掘り起こすような作品。触れることでも素材を感じ、体験し、鑑賞できる(撮影/Yuta Sawamura、画像提供/21_21 DESIGN SIGHT)

本多沙映氏(以下、本多) 「Cryptid」はフェイクファーの素材を集めてつなげた作品です。高野山のある和歌山県の高野口という小さな町にフェイクファーの産地があります。その高野口に生産の現場を見に行き、70を超える複雑な工程を経て作られているのを目の当たりにしました。

本多沙映「Cryptid(クリプティド)」。和歌山県橋本市高野口町でクラフトファー(フェイクファー)を生産する中野メリヤス工業の工場を見学して着想を得た作品。使われるファーは、フェイクファーであることに気づかないほどの存在感がある(撮影/木奥恵三、画像提供/21_21 DESIGN SIGHT)

本多沙映「Cryptid(クリプティド)」。和歌山県橋本市高野口町でクラフトファー(フェイクファー)を生産する中野メリヤス工業の工場を見学して着想を得た作品。使われるファーは、フェイクファーであることに気づかないほどの存在感がある(撮影/木奥恵三、画像提供/21_21 DESIGN SIGHT)

 繊維を編み、そのループを切って細かくして染色してと様々な工程があるのですが、その工程一つひとつのバリエーションを増やすことで様々な表現ができ、“本物”にするための工夫が本当にすごい。染色技術はもちろん、例えば、ちょっと濡れた犬の毛のような風合いを表現するために、職人がフェイクファーに樹脂を塗ることもある。その工場にはハギレがいっぱい落ちていたので、そういった技術が詰まったハギレを集めて新しい毛皮にできないかなと思って作った作品です。

――今回の企画展「Material, or」は、素材を自然に存在する「マテリアル」と、何かを作るために人間の意図が付与された「素材」に分けることで、人間と素材の関係を見直そうというものです。その意味で、お二人の作品は自然と人工という価値観を揺さぶるものだと感じます。

このコンテンツ・機能は有料会員限定です。

この記事を無料で回覧・プレゼントする

Adblock test (Why?)


からの記事と詳細 ( 自然か人工か、既存の価値観揺さぶるアーティストが素材を語る - 日経クロストレンド )
https://ift.tt/10zmT2h

No comments:

Post a Comment