ホテル内のバーに提供した作品が無断でまるで別の姿に改変された――。アーティストの吉田朗さんと、そのマネジメントを手がけるユカリアート代表の三潴ゆかりさんによる抗議が波紋を広げています。ねとらぼ編集部では、改変に関与したとされる三井不動産およびマザーエンタテイメントに事実関係を問い合わせました。
変更には許可が必要だが、無断で改変されたとの主張
吉田さんらの発表によると、アート作品「渋谷猫張り子」が設置されているのは、三井不動産が所有する商業施設やホテルなどが一体となった「sequence MIYASHITAPARK」の最上階にあるバー「SOAK」。
2019年8月、吉田さんは設置当時SOAKの運営会社だったBAKERU(当時は東京ピストル)から制作依頼を受け、作品を制作しました。その後、2020年4月に作品が設置され、11月に同店がオープンしています。
ところが、その約2年後の2022年9月、ユカリアートのスタッフはSOAKのInstagram投稿を見て、作品が改変されていると気づいたといいます。改変は、白色の文字やマークが多数描かれた真っ黒なラッピングシートで、作品全体と台座部分を覆い隠すというものでした。吉田さんらは、著作権や著作者人格権は納品後も作者に帰属しているため、作品に変更を加える場合は許可が必要にもかかわらず、無断で作品が改変されたと主張しています。
吉田さんらがBAKERUに連絡すると、SOAKの事業をマザーエンタテイメントに譲渡したと知らされたとのこと。また、改変はマザーエンタテイメントが三井不動産の許可を得たうえで実施した、との回答を両社から得たとしています。なお、作品はその後、改変された状態のまま東京近郊の倉庫に移動されたため、現在も倉庫にあるのではないかとの推測を示しました。
吉田さんらは本件について、「私達はこの緊急性のある案件に対して、事件発生当初から現在に至るまで、迅速で誠意を持った対応を受けておりません。また、作品とアーティストへの敬意や文化への理解も全く感じられません。ひとえに自分たちの力のなさ、不甲斐なさを感じております」とコメント。
「今回のやりとりを通して、被害を受けた側がいかに弱い立場に立たされるか、大きな企業を前にアーティストという一個人や弊社のようなごく小さな法人がいかに無力であるかを痛感する毎日です。私達はこの半年、日々、もがき苦しんでいます。事件発生から半年を迎え、既に精神的には限界を迎えました」と、現在の心境を吐露しています。
三井不動産「アーティストおよび関係者への配慮を欠く対応」を謝罪
ねとらぼ編集部では、三井不動産およびマザーエンタテイメントに事実関係や今後の対応などについて問い合わせたところ、三井不動産の広報担当者は「この度は、弊社運営施設に設置されたアートに関し、アーティストおよび関係者の方への配慮を欠く対応を行ったことをお詫び申し上げます。本件につきましては先方と協議中のため、詳細については回答を差し控えさせていただきます」と回答。一方で、マザーエンタテイメントからは期日までには回答を得られませんでした。
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