2022年6月4日(土)〜11日(土)、『アートにみるフェティシズムとディシプリン』展が、駒込にあるアートギャラリーのコマゴメイチイチヨンキャス(KOMAGOME1-14cas)で開催される。
展示では、フェティシズムの元の意味である「物神崇拝」に焦点を置き、8人の作家がそれぞれの手法で、性的なアプローチだけではない「フェティシズム(物神崇拝)」と「ディシプリン(拘束)」を表現。
ディレクターの玲芳龍(レイ・ホウロン)のセレクトした参加アーティストは、世界中のアンダーグラウンドカルチャーを取材するケロッピー前田、ドラァグクイーンや文筆家、「非建築家」としてジャンルを横断して活動するヴィヴィアン佐藤など、日本のフェティシズム界を代表する人たちだ。ハードなフェティシズムであるヘビーラバーとガーリーなイラスト、女王様、マゾヒスト、フェティシストたちのリアルアート、造形作品とコルセットデザインなど、作家同士のコラボレーションや対比を同空間で味わえる。
フェティシズムとディシプリンの関係性
性嗜好(しこう)、性癖、BDSM(ボンデージ、ディシプリン、サディズム&マゾヒズム)などの文脈で取り上げられることが多い「フェティッシュ(Fetish)」。実は、音楽やファッション、芸術、文化など、さまざまなシーンで影響を与えるテーマでもある。
「フェティシズム」という言葉は、もともと人類学で「物神崇拝」という意味で使われていた。のちに心理学の分野で、パーツや素材などに対して強い性的魅力を感じる感情的な意味合いを持つようになったのだ。そして「ディシプリン」は、訓練や規律を意味し、BDSMの世界ではしつけや懲罰、調教などの意味で使用されている。
芸術作品は鑑賞者の解釈に委ねられることもあるが、フェティシズムという分野においては、揺るぎない偏りや微妙なこだわりが存在する。誰も自由に操ることのできないそれぞれのフェティシズム(執着、欲望)の作品を展示することで、作家から鑑賞者のディシプリン(拘束、調教)という構造が成り立っている。
「地上に飛び出したフェティシズム」に触れる
1990年代後半からフェティッシュシーンで活躍する玲芳龍は、自身の感覚から「その人の好奇心や興奮、シチュエーションによってフェティシズムの受け取り方は変容するのではないか?」と考えたことが起点となり、本来は薄暗い閉鎖的な空間で表現されるテーマを、あえてアートギャラリーで展示を企画した。
さらに、フェティシズムをアートの文脈から取り上げることで、「アート」という言葉が内包する懐の深さや表現の自由というポジティブな印象が加わると語る。例えば、今回参加予定の作家、中村馬之介やオウサムは、個人的に使用するために製作した作品を展示する。実用的なツールではあるものの、「ホンモノ」であるからこその美しさが内在している。
その素晴らしさは、アンダーグラウンドな物事に関心を向けた人たちにだけでなく、「アート」というフィルターを通すことで地上に飛び出すことを可能にし、より多くの鑑賞者の隠された感情を呼び起こすに違いない。 地下に眠ったフェティシズムを表のギャラリーという空間で触れられるのは、今回の展示でしか経験できないことだろう。この異質な空間をご堪能あれ。
『アートにみるフェティシズムとディシプリン』展の詳細はこちら
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