東日本大震災直後に支援物資で送られたものの使われなかったランドセルを生かし、世界のアーティストが制作した作品の展覧会「まじゃらいん―帰ってきたランドセル」が宮城県石巻市中央3の「石巻祥心会く・ら・ら」で開かれている。「支援の気持ちが消えないように、思いを引き継ぎたい」と2012年に始まった展覧会が世界各国を巡回し、出発点の石巻に帰ってきた。【神内亜実】
「まじゃらいん」は石巻の方言で「みんなで一緒に」の意味。会場では、壁一面に個性豊かな170個のランドセルが並び、まるで劇場のような光景が広がる。毛糸のかぎ針編みでチョウのような羽をあしらったランドセルは、09年の台風で自宅を流されたフィリピンの美術家が「羽があったら溺れかけた姪(めい)や甥(おい)を救ってあげたのに」と当時の心境を表現した。主催する芸術家、武谷大介さんは「災害の多い東南アジアの作家ならでは」と解説した。
カナダ・トロントを拠点にしている武谷さんは、震災後に同市や女川町の仮設住宅などで子供向けのワークショップを開いていた。そこで出会ったのが、同町在住で高校の美術講師だった梶原千恵さん(38)。2人は活動の中でランドセルが体育館倉庫で山積みになっていると知り、アートに作り替えられないかと考えた。
100個を譲り受け、うち35個を武谷さんがトロントに持ち帰った。現地のアーティストに制作を呼びかけ、集まった作品で12年に石巻や女川で展覧会を開いたのが始まりだ。以後、国内20カ所とシンガポール、フィリピンなど地震や台風被害が多い東南アジアを中心に9カ国・地域を回った。
開催地が広がるたび現地の作家が加わり、作品数も増えた。武谷さんは海外ではランドセルになじみがなく、「大人も子供も物珍しそうに背負って、関心を寄せてくれた。作品の意味を考え、震災を自分事として捉えてもらえた」と手応えを感じる。
「ランドセルアート」の題材はさまざまで、必ずしも「震災」を扱わないが、アートを入り口に震災を伝えることが狙いだ。梶原さんは「これまで世界に発信しようと外に向かっていた」と振り返りつつ、今後は「巡回展で生まれた各国とのつながりを地元に還元したい」という。梶原さんは美術講師を退職し津波で祖母を亡くした経験や芸術活動の取り組みを生かそうと九州大大学院芸術工学府で災害伝承を研究している。武谷さんは石巻に制作拠点を構え、日本で活動するつもりだ。2人は再び石巻を出発点に、発信を続けていく。
展覧会は10月2日まで。無料。
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