滅多に見られない「RAT」とは?
エンジン整備工場の次に向かったのは、実機が置いてある格納庫の「第1ハンガー」だ。広大なスペースには、整備中のボーイング「777」が駐機していた。777は国内線・国際線で使われており、国内線では500席に達する巨艦だ。
「これはなんですか?」と、早速、機首の横に取り付けられているセンサーに興味を示す森崎さん。
「これはAOA(Angle of Attack)センサーです。翼と対向する空気の流れの角度を計測します。これにより、飛行機のストール(失速)を防ぎます」
機首の側面にあるセンサーなど。
© Hiromitsu Yasui
ハンガーは一等航空整備士(ボーイング737、777、787)の資格を持つJALエンジニアリングの吉田達央さんが案内役だ。
つぎに、ランディングギア(前脚部)の格納部分を見た。「実はドアの前縁に着陸時に使うILS(Instrument Landing System)の受信用アンテナが装着されています」。
ランディングギアを観察する森崎さん。ちなみに森崎さんは、ランディングギアの出し入れ時に聞こえる独特な音が好きという。
© Hiromitsu Yasui
「ILSは、着陸進入中の飛行機へ、指向性誘導電波を発射し、安全に滑走路上まで誘導する計器進入システムですよね」と、森崎さんが説明する。吉田さんによれば、今後、マイクロ波レーダーを活用したシステムもあるそうで、将来の完全自動着陸技術につながるそうだ。
移動中、ところどころに、ひらがなで書かれたクイズが掲示されていた。オンライン航空教室での配信用に使われるという。新型コロナによって、工場見学が出来なくなったいま映像を制作しているそうだ。苦しい状況ではあるものの、“ファン”を大切にする姿勢に、森崎さんは感心していた。
貨物室ドアの前にて。
© Hiromitsu Yasui
機体下部に突起を発見。「これは万が一、エンジンがどちらも停止し、発電機が再始動するまでの間に機能する、RAT(Ram Air Turbine)です。風力発電により重要なシステムへの継続的な電力と油圧の供給をおこないます」と、吉田さん。整備のため、たまたま機体外に出しているそうだ。
「これは普段、見られない安全装置ですよね?」(森崎さん)
「そうですね。これが作動するほどのトラブルはいままでありません」(吉田さん)
滅多に見られないRAT(Ram Air Turbine)。
© Hiromitsu Yasui
ビル6階分に相当する高さの垂直尾翼へ
主翼をひととおり見学したあと、垂直尾翼へ。ビル6階分に相当する高さとのこと。方向舵などを整備するための最上部は、専用エレベーターに乗って移動する。
主翼を見学する森崎さん。
© Hiromitsu Yasui
主翼の整備用に組み立てられた足場。
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6階に到着後、下を見ると、とんでもない高さにいるのがわかる。機体の上部に、一部盛り上がった部分を発見。ここは機内Wi-Fi用の通信システムになるという。
「エアバスA350の垂直尾翼にはカメラが装着されているので、真上からの機外の様子を機内モニターで見られるんです」と、森崎さん。さすが、飛行機好きだけに知識が豊富である。
垂直尾翼の周囲にある足場。最上部への移動は、エレベーターか階段を使う。
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垂直尾翼を見る森崎さん。
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垂直尾翼の上部付近から、機体を見下ろした様子。
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Aハンガーに移動すると、整備を終えたばかりの美しい787が駐機されていた。
「これは圧巻ですね! 787の主翼が美しいですね。好きです」と、森崎さんは目を輝かせる。格納庫に入ったのは、初めてという。
間近で見た787は大いに感動したという。
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機体をグルっと見ていると吉田さんが「エンジンのナセル(カバー)にある“ギザギザ”は、なんのためにあるのかわかりますか?」。さすがの森崎さんも「うーん、これはなんのためでしょうか?」と訊くと、「騒音を減らすために考えられた形状で、シェブロンノズルといいます」。
機体のペイントは、昔に比べ耐久性が大幅に向上し、光沢感が長続きするとのこと。特別塗装機については「現在はデカールを貼っているので、かつての塗装に比べ容易です」とのこと。かつてあった「リゾッチャ」などの特別塗装は維持にくわえ、コストもかさんだという。
エンジンのナセル(カバー)にあるギザギザを観察する。静粛性を高めるのが目的という。
ハンガー内には、工具を管理する部屋も併設されている。あらゆる工具が綺麗に整理され、置かれていた。見たことのない巨大なトルクレンチや、極小のスパナなど、本当にたくさんの工具があった。
なかでも気になったのは、「樫木棒」という木の棒だ。「エンジン・ダクトのインストール時に使います。金属の棒では部品に傷をつけてしまうからです」と、吉田さん。天然の木材が、れっきとした工具として使われているのは驚きだった。
ハンガー案内してくれた吉田達央さん(写真右)は、一等航空整備士(ボーイング737、777、787)の資格を持つ。
© Hiromitsu Yasui
「これだけの種類と数の工具を見ると、いかに飛行機の整備が大変かよくわかります」
ひととおり見学した森崎さんは、あらためて飛行機の整備がいかに重要であるかを認識したようだ。「完璧な整備によって、日々安全なフライトが実現していると再認識しました。感謝しかありません」と、述べた。
Vol.3では、フライト直後のパイロットにインタビュー! その模様をリポートする。
【俳優・アーティスト森崎ウィンの飛行機探求】
Vol.1 エンジン整備工場編
綺麗に工具が整頓された部屋。
© Hiromitsu Yasui
スパナも無数に近いサイズが揃う。
© Hiromitsu Yasui
極小サイズもある。
© Hiromitsu Yasui
※すべての写真は特別な許可を得て撮影しています。
【プロフィール】
森崎ウィン(俳優・アーティスト)
1990年8月20日生まれ。現在、日本のみならず母国ミャンマー、そしてアメリカのハリウッドでも活動中。
<出演情報>
ミュージカル「米倉涼子 X 城田優 『SHOWTIME』」
公演日時:2021年6月23日(水)〜6月27日(日) 全6回公演
会場:東急シアターオーブ
https://theshowtime.jp
コンサート「Tokyu Musix Challenge」
会場:Bunkamura オーチャードホール(東京都渋谷区道玄坂2丁目24−1)
開催日時:2021年5月7日(金)
開場 17:30 開演 18:00(終了予定20:00)
https://ift.tt/3aETgCV
ミュージカル「ジェイミー」
2021/08/08(日)~29日(日)東京建物Brillia HALL
2021/09/04(土)~12日(日)新歌舞伎座
2021/9/25(土)~9/26(日)愛知県芸術劇場 大ホール
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まとめ・稲垣邦康(GQ) 写真・安井宏充(Weekend.) スタイリスト・森田晃嘉 ヘアメイク・KEIKO
からの記事と詳細 ( 俳優・アーティスト森崎ウィンの飛行機探求──Vol.2 ハンガー編 - GQ Japan )
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