連日報道される新型コロナウイルスの感染者情報。いつ、どこで、感染者が出てもおかしくない状況が続く。万一、従業員の感染が疑われた場合、どの時点で濃厚接触者に情報を伝え、自宅待機などを命じるべきか。実例や専門家の意見から、雇用側や働き手の望ましい対応を探った。 (植木創太、佐橋大)
五月上旬の午後十時ごろ、愛知県内に住む六十代のパート女性は会社から連絡を受けた。「職場で陽性者が出た」という知らせだった。その後、保健所から濃厚接触者と告げられ、PCR検査を受けることに。結果は陰性だったが「当事者が検査を受ける時点で知らせてくれれば、孫や高齢の親に会わないなど行動を気を付けたのに」と憤る。
感染疑いの段階か、PCR検査で陽性になった段階か−。職場に濃厚接触の可能性のある人がいる場合、本人にいつ伝えるかは、各会社に委ねられている。
東海地方の従業員約三千人のメーカーは七月末、「PCR検査を受けた」と報告を受けた段階で、本人の了解を得て接触した人を聞きとった。その結果、保健所より先に濃厚接触者を洗いだし、自宅待機させた。職場の消毒も実施。余計な混乱を避けるため、他部署へは個人が特定できない形で連絡した。
一方、春に感染者が出た同じ地方のメーカーは、PCR検査で「陽性」の判定が出たのを受け、濃厚接触者に自宅待機を指示。職場の消毒などを進めた。担当役員は「不確定な段階で社員の不安をあおらないよう慎重に対応した」と説明する。感染者が出たことは、社内外に個人が特定されない形で伝えた。さらに、中傷や差別を避けようと、従業員に向け「感染した人が悪いのではない。悪いのはコロナ」とする社長のコメントを出した。
新型コロナで会社側に求められる対応は二つ。感染した社員の個人情報を守ること、周囲の社員の安全確保だ。労働安全衛生法は、会社に対し、従業員の安全と健康に配慮する義務を課している。感染情報がありながら、防止対策を取らなければ安全配慮義務を怠ったと言われかねない。一方で、不用意に感染情報を伝えるとプライバシーの侵害になる恐れがある。
「図解 新型コロナウイルス 職場の対策マニュアル」の著者で産業医の経験が長い医師、亀田高志さん(56)=福岡県=は「感染を防ぐ意味では、PCR検査を受ける段階で、濃厚接触の可能性がある人を自宅待機させる対応はあり得る」と説明。ただ、「本人の同意を得ることが不可欠」とくぎを刺す。
個人情報やプライバシーに詳しい森・濱田松本法律事務所(東京)の弁護士、蔦大輔さん(37)も、情報の扱いに対する注意を呼び掛ける。会社や同僚が不適切な発信をすれば、プライバシー侵害による損害賠償責任を負う可能性がある。特に、検査前、または検査中の段階では陰性の可能性もあるため、職場内の共有は、労働安全衛生法規とプライバシーを考慮しつつ、例えば、濃厚接触者になりそうな人や同じ部署の人に限るのが適切という。
加えて、個人の特定につながらない配慮も大事だ。蔦さんは「会員制交流サイト(SNS)が身近になる中、特定に結びつく情報発信やうわさの拡散などは違法行為に当たりうるという認識も、社内で共有してほしい」と訴える。
どんな情報を、どの範囲まで伝えるか、どんな対策を取るか。亀田さんは事前にルール化するよう助言する。「完成したルールを広く知らせておけば、社内の安心感が増す」。もう一つ、感染し、休んだ社員が復帰しやすい環境づくりも必要だ。亀田さんは周囲が偏見を抱かないよう「誰でもかかり得る感染症」といった正しい知識を徹底することが肝要と呼び掛ける。
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