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Thursday, April 30, 2020

眉村ちあきのルーツをたどる | アーティストの音楽履歴書 第19回 - ナタリー

アーティストの音楽遍歴を紐解くことで、音楽を探求することの面白さや、アーティストの新たな魅力を浮き彫りにするこの企画。今回は個性あふれるキャラクターと楽曲の魅力で人気をどんどん拡大している眉村ちあきに話を聞いた。

取材・文 / 臼杵成晃

音楽にはまったく興味がなかった子供の頃

子供の頃は活発で、よく木登りをしてました。みんなと仲良く遊べるタイプだし、知らない子とも遊んでました。「この人誰だろう?」と思いながら遊ぶ。今も変わってないですね(笑)。子供の頃の風景でよく覚えてるのは……泥団子を作って並べていたら、同じ保育園の意地悪な子が泥団子を次々に踏みつぶしていったんですよ。それがショックすぎて。団子がグニャッとつぶれる瞬間は今も忘れないし、いまだにその子のことは大っ嫌いです。あと砂場に山を作って、一生なでるという遊びをしていました(笑)。つるつるになるまでなで続けてました。

音楽は全っ然聴いてませんでした。「ミュージックステーション」が映ってたら観てたくらい。あ、でも保育園のときに「エルマーのぼうけん」という劇をやったんですよ。私は竜の役で、劇の始まりにソロで歌う場面があって。ロープで縛られて「誰か助けに来てくれよ」みたいな歌をずっと1人で歌うんですけど、そのときに「気持ちいい!」と感じたのを覚えてます。お客さんの前で歌うのは気持ちいいなって。親たちが飲み会しているところに行って「みんな見て!」って言って歌ったりもしてました。パパは沖縄の人で、家では沖縄音楽が流れてたけど、全然興味はなかったです。性格的には沖縄の血があるのかな。ウチナータイムってあるじゃないですか。パパは時間を守れるし全然違うんですけど、私はウチナータイム寄りだと思う。

音楽で最初に好きになったのはミニモニ。ですね。それはでも曲が好きというより、プリキュアと同じ感覚で見てました。小学生のときに金管サークルに入ったけど、それも別に音楽が好きだったからじゃなくて、金管サークルに入ったらカッコいいかなと思ったのと、発表会があったから。発表したい。人前に立ちたいというだけ。目立ちたがりというわけじゃないけど、クールな顔でやってモテたかったんです(笑)。でもめっちゃうまくて、トロンボーンのパートリーダーだったんですよ。ソロはパートリーダーしか吹けなくて、立ち上がってソロを吹くんです。楽譜は3年間ずっと読めなくて、先生がやる見本を真似てやってました。


いろいろおかしいアイドル活動、どついたるねんの衝撃

中学高校はずっとバレーボールをやってたので、変わらず音楽には全然興味なかったです。カラオケに行くのが好きなくらいで。本当に音楽は全然聴いてなくて、ちゃんと意識して聴いたのは……高校のときにK-POPが流行っていて、私はその中で東方神起さんが好きでした。それまではアーティストを好きになることはまったくなかったし、東方神起さんも周りで流行ってたから、自分で選んだかと言ったらそうでもなくて。初めて自分で「わっ、好きだ!」と思ったのは、どついたるねんさんです。19歳のとき。高校の同じクラスに軽音楽部の人がいて、1人だけ中二病みたいな感じだったんですよ。面白いなこの人と思って見てたら、その人は神聖かまってちゃんが好きで、軽音楽部でカバーしてたんです。それを見て「頭おかしいなあ」と思って、神聖かまってちゃんを調べて聴いてみたら、すごくカッコよくて。それから2年くらい経って、初めて神聖かまってちゃんのライブを観に行ったら、どついたるねんさんとツーマンしてたんです。どついたるねんさんは悲しい曲を悲しく歌うんじゃなくて、視覚的にも音楽的にもバカだなーと思わせるようなのがカッコいいなと思って、好きになりました。

神聖かまってちゃんを調べてから初めてライブに行くまでの間に、私はアイドルグループに入って解散しているんです(笑)。話は前後しますけど、K-POPを聴き始めたとき「BoAさんみたいにバックダンサーを引き連れて歌う女になりたい」と漠然と思ったんです。でもどうやったらなれるかわからないから、とりあえずボイトレを始めて。ただ、ボイトレの先生が言ってること全然合ってなくね?と思ったんですよ。例えば「腹式呼吸は絶対にしなきゃいけない」と言われたけど、腹式呼吸じゃなく売れてる人もいるんじゃね?って。ピッチがズレるときも、それ直す必要あるのかな、人によるでしょ、と思ったんです。胸に手を置いたら心がこもっているように見えるとか、そんなの人によるだろとしか思えなかったんです。結局ボイトレは1年で辞めちゃいました。

でもその先生が親切で、「知り合いのアイドルグループがメンバーを募集してるから会ってみない?」って誘ってくれたんです。「ダンスボーカリストになりたいなら歌って踊る基礎を身に付けなきゃいけないし、第一歩としてグループに入るのはどう?」って。私はアイドル=K-POPのセクシーなお姉さんというイメージしかなくて、そのイメージでグループに入ったんですけど、現実は全然違っていて……そのグループも1年で解散しました。

奇跡の積み重ねでデビュー

それからソロ活動を始めたものの、みんながどうやってオリジナル曲を作っているのか知らないから、とりあえず打ち込みで作り始めました。ピアノを弾くおじさんが近くにいて、GarageBandというものがあると教えてくれたんです。コードとかもわからなかったんですけど、要するに“いい感じ”ってことでしょ?って。いい感じに耳が心地よければいいんでしょ、みたいな。1年くらい経って、みんな自分で作ってるわけじゃなく業者に発注してるってことを知って「なんだよ!」と思ったんですけど、トラックメイクしているうちにある程度作れるようになっていたので、このままトラックメーカーとしてやっていこうと決めました。

最初の頃は自分で作ったトラックをCDに焼いてPAさんに渡して、1人で踊りながら歌ってました。キャパ50人未満のところで、アニソンをカバーしている人とか地下アイドルと一緒に。アイドルグループにいたときのつてでしか出れていなかったから、自分で音源と名刺をいろんなライブハウスに配って「いつでも呼んでください」って売り込みしてました。渋谷の「フェスボルタ」というフェスに出たのは大きくて、そこから少しずつお客さんが増えていきました。あのフェス、電話すれば誰でも出られるんですよ。ライブハウスに出てもお客さん2人くらいだったりするし、変な人しかいないんです。でもフェスだといろんな人がいるし、変じゃない人にも観てもらえる。しかもフェスが終わってみんなが帰る頃に「さっきフェスで見た子だ」ってなるように計算して渋谷の駅前で路上ライブをやりました。

早くこの状況から抜け出したい、早く売れたいと思っていろんなことをやってました。弾き語りで街を歩いたりしたのも、ライブのときに靴下を脱いで投げていたのも、会社を作った(2017年12月に自身が代表取締役を務める「(株)会社じゃないもん」を設立)のもそうですけど、みんなびっくりするかなと思って。「この子楽しそうだな」って思ってもらいたかったんです。私はファンの人に恵まれてましたね。みんな面白いんですよ。私が何かをやると、面白い感じで拡散してくれる。拡散の仕方にセンスがあるんです。で、「もっと売れるには吉田豪さんしかいない」と豪さんにトークイベントをお願いしたんです。あんなに下調べをしてくる豪さんが、そんなに興味がなかったのか「今日は何も下調べしてませんよ」って言われてどうしようかと思ったんですけど、そのイベントで興味を持っていただけたみたいで。豪さんと南波(一海)さんのイベントに呼んでもらったり、「ゴッドタン」に呼んでもらったりして、たまたまその「ゴッドタン」をトイズファクトリーの人が観てて……という奇跡の積み重ねでデビューできました。

デビューしてわかった先輩アーティストたちのすごさ

デビューしてからいろんな人に会って、いろんなアーティストさんへのリスペクトの気持ちが高まりました。ゴールデンボンバーさんは耳だけじゃなく目でも楽しめるじゃないですか。五感をめっちゃ使って音楽している人が大好きで、「俺たち音楽だけで勝負してっから」みたいな人より全然いいと思うんです。ゴールデンボンバーさんを観ているとディズニーランドみたいだなって。それをやってる鬼龍院翔さんはすごいと思っていたんですけど、対バンに誘ってもらったときも「眉村さんはこんな人ですよ」とこんな新人に丁寧に前説までしてくれて。音楽シーン全体を考えてくれてるんだなって……早く売れたいとか目立ちたいとか、自分のことばかり考えてた自分が恥ずかしくなりました。

加藤ミリヤさんは純粋に歌うめーなって思って。それもつい最近で、ホント今になって「嵐っていい曲いっぱいあるなー」みたいな(笑)。昨日はスガシカオさんを初めて聴いて感動しました。シャッフルで流れてきて「誰これ? すげー!」と思ったらスガシカオさんでした。学生の頃は本当に音楽聴いてなかったし、曲作りも適当だから「影響を受けたアーティストは?」って言われても答えられないんです。思い入れの強い作品を挙げるなら……テイラー・スウィフトさんの「Mean」という曲です。テイラー・スウィフトさん自身がいじめられてたときのことを書いた曲だそうなんですけど、その人にしか歌えない曲はすごいなって。それで世間をひっくり返してやるっていう気迫を感じるんです。でも曲調は優しくて、これから大きくなっていく子供たちを勇気付けるような曲だから一番好きです。

曲作りは今もよくわかってなくて……チャラーンってやったら、ラーラーラーラー(ドミソド)みたいな感じじゃないですか。その中で音程が決まるから、その4個から適当に1つ選ぶとして、だったらタララーって始めよう、としか説明しようがなくて。たまに「曲作りの仕方を教えてください」って言われるんですけど、私は絶対に人に教えちゃダメな人だと思います。眉村ちあきボーカル教室をやるとしたら「いい感じに声張って」とかしか言えない(笑)。星野源さんの「うちで踊ろう」をやってみたけどあれも適当で、聴いていたら「これ星野源さんの昔の曲と混ざるんじゃね?」って思ったから混ぜてみたんですけど……マッシュアップ? 混ぜるってことですか? そうです。マッシュアップをやりました(笑)。

接客は得意です

最近はトイズファクトリーの方がプロのアレンジャーやギタリストの方と会う機会を作ってくれて。この間なんてウカスカジーさんのレコーディングに立ち合わせてもらえたんですよ! たぶん「感じろ」ということなんだと思うので、感じてます(笑)。細かい作業は苦手で、打ち込みとかはできるんですけど、字を書いたり豆をつまんだりは苦手……豆をつまむことはあまりないですけど(笑)。あと化粧をするのも苦手です。字を書くのは本当に嫌すぎて、10文字くらい書いたらウワーッ!ってなります。だから履歴書を書くのは本当にしんどかったです(笑)。あ、PRに書くのを忘れてたけどバイト経験もあります。私は裏でお皿をめちゃくちゃ割るタイプだし、料理をやらせても焼く順番が違ったりとかするから裏方は向いてないです。その代わり「お代わりしますか?」とか「これ超オススメですよ」とか接客するのは得意なんです。だからアピール欄に書いてみました。

2020年の今は、とにかく元気です。これから先は……まず3年後くらいには会社の社長の任務を誰かに託して、私は会長として生きていこうと思います。20代にして会長になるのが目標。あとは、なる早で1万人規模の会場でワンマンがしたい。あと私はまだシングルを出したことがなくて。歌番組とかに出るとき、いつも違う曲を歌ってるんですよ。だからシングルを出して1曲だけを猛プッシュするとどうなるのか見てみたい。アコースティックバンドもやってみたいし、オーケストラもやってみたいし、ホーン隊も入れてみたい。アレンジャーを付けてアルバム1枚作るのもやってみたい。あと、ももいろクローバーZさんと約束したんですけど、流れるプールの真ん中でライブがしたい。ライブしてる後ろで戦隊モノみたいな爆発をさせたいし、天井から登場したいし、車に乗って壁を破って登場したい。やりたいことは無限にあります。

眉村ちあき(マユムラチアキ)

東京都出身。弾き語りトラックメイカーアイドル、実業家。グループアイドルとして活動を行ったのち、2016年2月に眉村ちあき名義でソロ活動を開始。2017年12月に株式会社会社じゃないもんを設立し、自身が代表取締役社長を務めている。2019年1月には30曲が収録された初の全国流通アルバム「ぎっしり歯ぐき」をリリース。2019年5月にTOY’S FACTORYからメジャー1stアルバム「めじゃめじゃもんじゃ」、2020年1月にメジャー2ndアルバム「劇団オギャリズム」を発表した。

アーティストの音楽履歴書

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April 30, 2020 at 04:42PM
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