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Thursday, March 19, 2020

柳樂光隆が語る、専門性の大切さ アーティストの微細な違いを知る - CINRA.NET(シンラドットネット)

サンダーキャット、フライング・ロータス、ソランジュやジェイコブ・コリアー、果てはロックバンド、Alabama Shakesのフロントマン、ブリタニー・ハワードまでもが、ジャズのネットワークの中で音を鳴らしている――音楽評論家の柳樂光隆が監修したムック『Jazz The New Chapter 6』は、そう語っている。上記したミュージシャンの多くが近年の『グラミー賞』受賞者であること(しかも多部門にまたがっていること)を踏まえれば、ジャズをとりまく宇宙を考えることは、そのまま今の音楽を考えることにつながるだろう。

「ロバート・グラスパーから広がる現代ジャズの地平」を謳った、2014年の衝撃的な『Jazz The New Chapter』シリーズ開始から早6年。本シリーズを世に送り出してきた柳樂に、話を聞いた。もう一度、耳を世界に開くために。

音楽に関するテキストで、最も多く触れてきたのはライナーノーツです。

―『Jazz The New Chapter 6』(以下、シリーズは『JTNC』表記)を読んで、「今のジャズがわかるアルバム100枚」のリストアップは不可能だ、とさえ感じました。そんな簡単に区切れるものではなくて、どんどん拡張しているものを、ひとまず2020年時点で詰めこんだ1冊ですよね。

柳樂:本当にそうですね。世代的なこともあると思うのですが、僕は本当にアメリカが、そしてアメリカの音楽が好きなんですよ。そこにカリブやラテンの音楽が紐づいていっている。「アメリカ音楽史にもとづいたジャズ」という枠組みにフォーカスしているから、かろうじて1冊に収まっていますけど、実は全然ページが足りないくらいです(笑)。

柳樂光隆(なぎら みつたか)<br>1979年、島根・出雲生まれ。音楽評論家。『MILES:Reimagined』、21世紀以降のジャズをまとめた世界初のジャズ本「Jazz The New Chapter」シリーズ監修者。共著に後藤雅洋、村井康司との鼎談集『100年のジャズを聴く』など。
柳樂光隆(なぎら みつたか)
1979年、島根・出雲生まれ。音楽評論家。『MILES:Reimagined』、21世紀以降のジャズをまとめた世界初のジャズ本「Jazz The New Chapter」シリーズ監修者。共著に後藤雅洋、村井康司との鼎談集『100年のジャズを聴く』など。

―拡張するものをミュージシャンは音楽へ、かたや柳樂さんは書物へ落とし込むわけですが、それは今の音楽の肌感覚と、先ほどおっしゃった世代的な感覚を含めた柳樂さんのジャズ観がシンクロしているところがあるのでしょうか。

柳樂:もちろん戦後日本の音楽はアメリカとの結びつきが強かったわけですし、イギリスの音楽もアメリカのオルタナティブとして受け止めるような歴史観や聴き方は、これまでの音楽評論などを通じて僕の中にしみこんでいます。一方でアメリカでも、特にトランペット奏者のウィントン・マルサリス(Wynton Marsalis / 『グラミー賞』のみならず、1997年にはジャズ・ミュージシャンとして初の『ピュリッツァー賞』音楽部門受賞)以降に、重要な文化としてのジャズ研究も進んでいるんですね。そこが噛み合っている感じはします。

たとえばアメリカの多様性を考える上で、カリビアンなど、移民の役割が大きいといった話が持ち上がっている。それに対して僕は、細野晴臣を通じて、彼がアメリカで薫陶を受けたプロデューサーであるヴァン・ダイク・パークス(Van Dyke Parks)へ、さらにそこからカリプソのマイティ・スパロウ(Mighty Sparrow)へ……とたどっていくような参照枠があるから、そうした考えがスッと理解できるところもあるわけです。

ウィントン・マルサリス『Blood On The Fields』を聴く(Spotifyを開く

『This Is Van Dyke Parks』プレイリストを聴く(Spotifyを開く

―国内の既存のジャズ語りの文脈から遊離した「JTNCらしさ」は、なんなのでしょうか。ジャズ評論家・油井正一的な往年の歴史語りでもなく、アメリカが好きだといっても植草甚一的でもなく、菊地成孔・大谷能生両氏のような楽理的な解析でもなく、副島輝人さんや大友良英さんのようなフリージャズ~インプロビゼーションの語りでもないですよね。

柳樂:逆に、僕が今おっしゃったそれらを全部を通っているのが大きいと思います。僕は大友さんの追っかけのようによくライブを見に行っていた時期があるし、大学時代は菊地さんのデートコース・ペンタゴン・ロイヤル・ガーデン(現在の「dCprG」)も東京ザヴィヌルバッハ(日本のエレクトロ・ジャズユニット)もめちゃくちゃ好きでした。一方でジャズ喫茶にも通っていて、置いてある本は読んでいたので、日本のジャズ批評史みたいなものはひと通り入っているからこそ、『JTNC』に行き着いたんですね。

あと僕にとってすごく大きいのは、レコ屋の店員だったこと。そして、音楽に関するテキストで最も多く触れてきたのがレコ屋での勤務の合間に読んでいたライナーノーツである、ということなんです。

東京ザヴィヌルバッハ『Vogue Africa』を聴く(Spotifyを開く

柳樂光隆

―同時代に流通している音楽をライナーノーツから吸収してきた、ということですか?

柳樂:ライナーって楽曲自体は同じでも、再発されると違う人が書き直すじゃないですか。特に1990年代はDJの人が文章を書き始めたこともありましたから、そこで同時代性が強く入ってくる。

レコードの値段も、逐一変わるんですよ。なぜ変わるかというと、人気、つまりは需要と供給で変化する。人はともすると、高止まりした評価のままで認識を変えられなかったり、あるいは下げ止まりのままで理解してしまったりしますけれど、音楽の意味や批評的な価値というものは、本当は常に変わり続けているんですよね。そうした流転する価値観も含めて、ジャズについて書き残しておきたいと思ったのは、ライナーノーツの影響が大きいです。

―『JTNC』でインタビューされているミュージシャンたちも、過去の音楽や歴史を鮮やかに再解釈していますよね。その手つきとも通ずる気がします。

柳樂:アメリカのジャズミュージシャンは、マジで信じられないくらいいろんなことを知っています。決して教養主義的ではなくて、今一番新しい人たちが、同時代性を考えるために過去の音楽についても語っているんですよ。

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