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Tuesday, July 9, 2024

RK Music特集|バーチャルアーティスト特化の気鋭レーベル所属NEUN、CULUA、MEDAを徹底解剖 - 音楽ナタリー ... - 音楽ナタリー

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バーチャルアーティストの隆盛

バーチャルアーティストと呼ばれる、仮想的なビジュアルをまとって音楽活動を展開するアーティストの存在がすっかり一般化してひさしい。テレビの音楽番組にモニター越しに、あるいは合成映像で出演する様子を見かける機会も増え、リアルライブ現場においてスクリーンに投影されたアバターがパフォーマンスを繰り広げる光景もさほど珍しいものではなくなった。そのあり方に疑問を呈する受け手も年々減ってきており、個人的な好き嫌いはあれど「そういう文化もあるよね」とフラットに受け入れる姿勢が標準化している印象だ。思い起こせば、2009年に行われた初音ミクの3DCGを投影するスタイルのリアルライブ「ミクフェス ‘09(夏)」が成功を収めて世間を驚かせていた時代には「スクリーンに映し出された“絵”が歌い踊る姿に熱狂する奇妙な観客たち」というような冷笑的な見方が大勢を占めていた印象もあるが、今となっては隔世の感がある。

この現状に至るまでの流れを簡単におさらいしておこう。前述した初音ミクはあくまでも音声合成ソフトの一種であるため、人格を持つバーチャルなアーティストの歴史はキズナアイから始まったと見るのが自然だろう。彼女の出現によって2016年に「バーチャルYouTuber(Vtuber)」という概念が確立されると、徐々にその名称および存在が広く世間に認知されるようになる。すると、その中でも音楽(歌)をメインに活動するVtuber、すなわちVシンガーと呼ばれるバーチャルアーティストもみるみるうちに市民権を獲得していった。そして2020年代に入ると、新型コロナウイルス感染症の流行に伴うオンラインテクノロジーの急速な発展も手伝って、誰もがスマホひとつで気軽にVtuberになれる時代が到来。必然的にバーチャルアーティストの母数は爆発的に増え、Vtuberシーンを彩る音楽性の幅も劇的に拡大することとなる。さらに花譜や星街すいせいなどに代表される、一般の音楽シーンにも多大な影響力を持つバーチャルアーティストも登場し始めた。

その結果、バーチャルアーティストとリアルアーティストをわざわざ分けて捉えることにさほど必然性が感じられなくなっているのが現状だ。2024年現在においては、「好きになったアーティストがたまたまバーチャルだっただけ」くらいの感覚でリアルアーティストと同列にバーチャルアーティストを応援している人も少なくないのではなかろうか。“アバターをまとって歌う“という活動形態はもはや特別なものではなく、「バンド」「シンガーソングライター」「トラックメイカー」「アイドル」などと同列の表現スタイルの一種として定着。これからアーティスト活動を開始する者たちにとっては、単に選択肢が1つ増えたというだけという話にすぎない。

そんな状況を背景に、Vシンガーに特化したプロダクション・RK MusicよりNEUN(ノイン)、CULUA(カルア)、MEDA(メダ)という3名のバーチャルアーティストが今年新たに産声を上げた。彼女たちは2023年8月に行われたオーディションを通じて選ばれ、今年5月25日に開催されたRK Music史上初のオンラインフェス「VOICE SPARK」にてステージデビューを果たしたばかり。それに先立ち、5月18日には3名同時に1stシングルをデジタルリリースしており、そのミュージックビデオが約1カ月間でそれぞれ約16~25万回再生されるなど、順調な滑り出しを見せている。

そんな期待の新人3名がいったいどんなアーティストなのか、それぞれのデビュー曲と併せて以下に紹介していこう。

物憂げで儚いエンジェルボイスの持ち主NEUN(ノイン)

NEUN(ノイン)

NEUN(ノイン)

白と黒の羽根が印象的なゴシックテイストのビジュアルを持つNEUNは、その風貌から受ける印象通りの物憂げで儚いエンジェルボイスを特徴とするシンガーだ。息遣いを強調するウィスパーライクなボーカルスタイルが持ち味で、やや舌足らずで幼さを感じさせる発声と繊細な歌表現をベースとしながらも、甘い歌声の中に聴く者の心を鋭く突き刺すような独特の周波数特性を備えている。

NEUN(ノイン)設定イラスト

NEUN(ノイン)設定イラスト

彼女のデビュー曲「Engelslied」は、ヒゲドライバーとPowerless(無力P)のタッグによって書き下ろされたシリアスかつシンフォニックなスローナンバー。ピアノと弦を軸とする張り詰めたサウンド感とマイナーキーの旋律および和声、クラシックテイストの部分転調などによって総合的に醸成されるゴシックなムードが、彼女特有の歌声をこれでもかと引き立てている。そして歌詞のテーマは、「堕ちた天使が歌で下界を救世する旅に出るまでの半生の一部を記したEpisode.0」。その壮大な世界観と厳かな言葉遣いの数々は、まさにNEUN特有のボーカル表現にシンデレラフィットしている。あらゆる意味において、デビュー曲としては破格の完成度を誇る1曲と言っていいだろう。

また、彼女はデビュー以来週3回の頻度で行っているYouTube定期配信で、生歌唱や雑談のみならずゲーム実況なども実施。持ち前の甘い声質とほんわかした語り口を武器に、着実にファン層を拡大中だ。

吸血鬼×サイバーパンク×主人公ボイスCULUA(カルア)

CULUA(カルア)

CULUA(カルア)

横髪を長く伸ばした青紫色のボブカットが目を引くCULUA。“吸血鬼×サイバーパンク”をモチーフにデザインされたハードなルックスと、ほのかに少年性を内包したややハスキーな“主人公ボイス”が特徴だ。かわいらしさや人間味を強調したボーカリゼーションと、それでいて温度感を一定に保ったような無機質さをも併せ持つ、非常に不思議な味わいのあるボーカリストである。

CULUA(カルア)設定イラスト

CULUA(カルア)設定イラスト

デビュー曲「ベビ・デビ」は、テクノフィーリングあふれるビビッドなシンセリードと躍動的なシンセベースが炸裂する四つ打ちのディスコポップ。遊び心と無機質さの同居するテクノサウンドだけに、前述したようなCULUAの歌声の特質とはまさに相性抜群だ。さらに、意味性よりも音としてのフィジカルな快感にフォーカスした歌詞もまたCULUAの声のキャラクターと非常によくマッチしている。特にサビ終わりで「ベビデビベビデビベビデビ……」とアクセル・ローズばりの早口で畳みかけられるパートは必聴だ。

彼女もまた週2、3回の頻度でYouTube定期配信を行っている。さまざまなタイプの楽曲を歌いこなす生歌唱はもちろんのこと、そのクールな見た目から飛び出すキュートでお茶目なトークのギャップが「一度聴いたらクセになる」と評判だ。

洗練された表現力で魅せる“生歌特化”の歌姫MEDA(メダ)

MEDA(メダ)

MEDA(メダ)

赤紫色のポニーテールとフューチャリスティックなミニスカートスタイルがトレードマークのMEDAは、洗練された中域が特徴的なクリアボイスを持つディーヴァ系シンガーだ。3人のうちでは最もオーソドックスなタイプのボーカリストと言え、前述の2人が“華やかな変化球投手”だとすると、MEDAのボーカルスタイルは“質実剛健な本格派右腕”のように表現できるだろう。

MEDA(メダ)設定イラスト

MEDA(メダ)設定イラスト

それだけに、彼女のために用意されたデビュー曲「Sing-ularity」は「歌のスキルでねじ伏せなさい」と言わんばかりのテクニカルな16ビートポップスであった。ストリングスをフィーチャーしたピアノバンドサウンドによってスタイリッシュかつオーセンティックな印象を与える一方で、ひねりの効いた歌メロと細かなキメの多いリズムアレンジが歌い手に要求するハードルは決して低くないはずだ。

なお、“半人間アンドロイド”が完全な人間になるために“感情”を探す、時空を超えた旅の始まりを描いたという歌詞には、MEDA本人の名前も共作者の1人としてクレジットされている。また、彼女が週3回行っているYouTube定期配信では、通常の生歌唱のみならずアコースティックギターによる弾き語りを披露することも。そうしたアーティスト性の高さに、彼女自身の底抜けに明るい人柄も相まって熱狂的なファンを続々と生み出している。

超次元の感動を

彼女たちの所属するRK Musicは、「超次元の感動を。」なるキャッチフレーズを旗印に、バーチャルアーティストの可能性を広げていくことで人々の感情を連鎖的に突き動かし、“感動を超える感動”を届けることを社是としている。その思想のもと、これまでにHACHI、KMNZ、VESPERBELLといった個性的なアーティストたちを世に送り出してきた。

そこへ上記の三者三様な新人が新しく加わったことで、少なくともRK Music内における「バーチャルアーティストの可能性」は確実に3人分は広がった。今後の彼女たちの活躍いかんによってはこれが足し算ではなく掛け算になり、なんなら指数関数的になっていく可能性だって秘めている。リスナー諸氏におかれては、その未来をぜひ彼女たちとともに作り上げていただきたい。

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