「5th ANNIVERSARY朱演2024 LIVE HOUSE TOUR『とびらの先 ~海/空~』」は斉藤にとってキャリア史上最長のライブハウスツアー。今年アーティストデビュー5周年を迎える斉藤は、4月20日の神奈川・SUPERNOVA KAWASAKI公演を皮切りに全国16会場を回った。
沸き起こったラップの大合唱
テレビゲームを彷彿とさせるピコピコ音と「君と始まる大冒険。扉の先に見えるのはいったい何か。さあ、一緒に探しに行こう」というアナウンスが流れると、斉藤とバンドメンバーがステージに登場。どこからともなく聞こえてくる波の音に、ゆったりとしたギターサウンドが重なる。心地のいい空気が漂う中、斉藤がそっと歌い始めたのは、デビューミニアルバム「くつひも」の収録曲「あと1メートル」。カッティングギターが優しく響き渡るアンサンブルに乗せて、彼女は伸びやかな歌声を場内いっぱいに響かせた。「行くよー!」と気合いを入れた斉藤は、大きなハンドクラップを浴びながら「リフレクライト」を披露。晴れやかな笑顔を受かべ、「君を照らしたい」とステージに立つ理由を示した。その勢いのまま斉藤は「月で星で太陽だ!」に突入し、希望に満ちたエネルギーをフロアに向けて放っていく。「パパパ」では蕾が花開くように、オーディエンスが一斉に手をパーの形に開いて踊った。
「S・H・U・K・A、朱夏ー!」というオーディエンスの弾けるようなコールでスタートしたのは、7月10日にリリースされたアーティストデビュー5周年記念ミニアルバム「555」の収録曲「だらけ」。斉藤は爽快なバンドサウンドに乗せて、「バラバラに壊れたあたしのハートは残念ですが 修復不可能、未解決だー!」と剥き出しの思いを歌い上げる。友情をテーマにしたポップなナンバー「最強じゃん?」では跳ねるリズムに合わせて、キャッチーなダンスがフロアに広がった。この曲でオーディエンスとの間にある確かな絆を確かめたあと、斉藤はシンセロック調の楽曲「ゼンシンゼンレイ」で会場の熱気をグイグイと引き上げる。そして彼女は観客の手を取って前へと突き進んでいくように「セカイノハテ」で芯のある歌声を響かせた。
ライブ中盤にはアコースティックコーナーが設けられた。「歌える人は一緒に歌ってくれますか?」という言葉とともにスタートしたのは「親愛なるMyメン」。歌うには難易度の高いパートもあるラップソングだが、フロアから「任せて!」という頼もしい声が上がった。その言葉通り、完璧に声のそろったラップを聴き、斉藤は歌いながら手を叩いて喜ぶ。「すごくない? これは本当にすごいわ。そのへんでみんな集まって練習した?」と彼女は目を丸くし、「こういうの見ると、ツアーってめっちゃいいなと思いますね」としみじみと口にした。アウトロでは斉藤が鍵盤ハーモニカを披露。バンドメンバーとの仲睦まじいやりとりを挟みつつ、呼吸を合わせてキャッチーなメロディを奏でた。斉藤が叩く木琴の音色で始まったのは、“友情”が“恋心”になる瞬間を描いた楽曲「恋のルーレット」。ポップな音色が印象的なこの曲だが、今回はチルなアレンジで切ない思いが表現された。さらに彼女はひと筋のスポットライトを浴びながら、アーティストデビュー当時に作られたバラード曲「ことばの魔法」を歌唱。繊細な鍵盤の音色に乗せて、1つひとつの言葉を大切に紡ぎ上げた。
アコースティックコーナーを経て、斉藤は最新アルバム収録の新曲「離れないで」を披露。斉藤にとって新たな挑戦となるシティポップ調のサウンドをバックに、ささやくような歌声と透き通るような美しいミックスボイスが響き渡る。斉藤はデビュー5周年ミニアルバムについて言及し、「最初から応援してくれてる人もいるかもしれないですし、最近私のことを知ってくれた人もいると思います。どのタイミングでもいいんです。たまたま斉藤朱夏という人を見つけてくれたり、友達に布教されて来てくれた人もいると思います。人それぞれいろんなスタートがあると思うんですけど、本当に私にとってかけがえのない存在なので、これからも仲間として一緒に5周年、そしてその先の10周年に向けて走っていけたらいいなと思います。10年歌い続けることができたらとても幸せです。まず5年、歌い続けられたことをうれしく思っています。ありがとうございます」と感謝の思いを述べた。
くつひもをしっかり結んで、デビュー5周年の先へ
冒頭にドラの音が入っている「僕らはジーニアス」では、昨年のツアーで行われたオーディエンス参加型のチャレンジ企画「ドラチャレ」が再び実施された。「ドラチャレ」は抽選で選ばれた2名のファンがステージに上がり、ドラを持つ係と叩く係を担当する企画。フロアにいるオーディエンスの「僕らはジーニアス!」という掛け声を合図に、選ばれたチャレンジャーはドラを叩き「ジャーン!」という音を力強く鳴らした。「僕らはジーニアス」を皮切りに、斉藤はアクセル全開でアッパーチューンを連投。「イッパイアッテナ」ではオーディエンスが一斉にジャンプする壮観な光景が広がる。会場をヒートアップさせた斉藤はパンクロックチューン「止まらないで」をエモーショナルに届けたあと、自身の生き方が詰まった楽曲「もう無理、でも走る」を熱唱した。
「この5年間たくさん走ってきて、ライブができなかったときもたくさんあったし、声出しができないライブも経験して。ソロデビューしてからいろんなライブを経験してるなと思います。もちろんソロで初めてステージに立って、『くつひもの結び方』というライブをやって。あのときはまだ“くつひもの結び方”がわかってなかったけれど、あのときの私にしかできないライブをやっていました」と5年前のライブを振り返った斉藤。続いて彼女は2020年にコロナ禍で中止になったしまったライブ「手つかずの明日」について「あのライブはなくなってしまったけど、私の心の中にはずっとあって。いつかできたらいいなと思っています。リターンみたいな」と思いを明かした。斉藤は「ライブというこの場所で、斉藤朱夏としてすごく成長できた5年だったなと思います。まだまだ未熟で足りないところももちろんたくさんあります。だけど、その弱さをここにいる君に見せることでどんどん強くなっている自分もいるし、なかなか弱さを見せられなかった過去の自分に『今こんな素敵な景色があるんだよ』ととても言いたい。いろんなことがたくさんあるけど、ここにいる1人ひとりがしっかりと斉藤朱夏の背中を押してくれて『大丈夫だ』って毎回言ってくれるから、毎回私はステージに立つことができます。本当に皆さんのおかげです。ありがとうございます」と思いを伝える。そして「まだ5周年です。その先があります。私はずっと歌い続けると約束します。ずっと皆さんのそばにいます。たくさんの仲間を連れて、大きな景色、一緒に見たくないですか?」と呼びかけ、大きな拍手と歓声を受けると「いつになるかはわからないけど、ゆっくり、じっくり、大きな景色を見れるようにこれからも歌い続けて、くつひもをしっかり結んで、君のヒーローにこの先になっていくと私はここに誓います」と約束した。
「東京ラストいけますかー!」と彼女はオーディエンスを煽り、アーティスト斉藤朱夏としての“始まりの歌”である「くつひも」を生き生きと届けた。最後に斉藤は「皆さん、本日は本当にありがとうございました。人生嫌なことたくさんあるけど、私は君の味方です。安心してね」と告げ、デビューミニアルバムのラストを飾る楽曲「ヒーローになりたかった」を披露。「みんなの背中を押したい」という、アーティスト活動を始めてから5年間一貫した思いをまっすぐにオーディエンスに伝え、デビュー5周年のその先へと進んでいった。
なお、このツアーの模様を収めたライブ写真集「斉藤朱夏 ライブフォトブック 朱演2024 LIVE HOUSE TOUR『とびらの先 ~海/空~』」が8月17日に発売されることが決定した。各店舗では明日7月15日に写真集の予約受付がスタートする。
セットリスト
斉藤朱夏「5th ANNIVERSARY朱演2024 LIVE HOUSE TOUR『とびらの先 ~海/空~』」2024年7月14日 新宿BLAZE
01. あと1メートル
02. リフレクライト
03. 月で星で太陽だ!
04. パパパ
05. だらけ
06. 最強じゃん?
07. ゼンシンゼンレイ
08. セカイノハテ
09. 親愛なるMyメン
10. 恋のルーレット
11. ことばの魔法
12. 離れないで
13. 僕らはジーニアス
14. イッパイアッテナ
15. 止まらないで
16. もう無理、でも走る
17. くつひも
18. ヒーローになりたかった
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