その問いに取り組むべく、Forbes JAPANは昨秋に「Art & Business Project」を本格始動。今回、そのアドバイザーに就任いただいた有識者たちの対談を3回にわたってお届けする。初回は、建築とキュレーション、それぞれの分野で日本を代表するプレイヤーとして活躍する永山祐子氏と山峰潤也氏。たびたび同じ案件にも携わる二人がいま見ている世界とは。
開発とアート事業の現在
山峰潤也(以下、山峰):僕の仕事はアート関連事業のキュレーションや企画提案・コンサルティングで、案件としては行政と企業とが半々ずつくらいです。同じことをするにしても、東京都がやるなら公共的な振り方をする一方で、企業がやるなら、やはりどこでマネタイズをするか、事業としてのサスティナビリティをどこに担保させるかといった円環を考える必要がある。なのでまずは、企業や団体の持っているミッションからブレイクダウンしていって、「御社がアート事業をやるならこういうことなんじゃないですか?」という事業診断的なところまで遡ってから提案を進めることが多いです。
永山祐子(以下、永山):私は建築家として都市開発系の仕事に携わることが多く、建築そのものに新たな付加価値をつけたり、従来とは違う都市の姿をつくったりすることを求められます。
例えば2022年に竣工した東急歌舞伎町タワーでは外装と内装デザインを担当しましたが、この場所がかつて沼地であったというコンテクスト、オフィスが入らない、日本初のエンターテインメントに特化した超高層ビルということで、新宿のオフィスビル群とは異なる外観や立ち姿を表現すべく、噴水をイメージしてデザインしました。やはりここでもアートが共にあり、現代アートギャラリーのANOMALYさんが“歌舞伎町”という独自の場所性に沿ってキュレーションしたアーティストたちの作品が、施設内の各所で展示されています。
歌舞伎町タワーもそうですが、国家戦略特区で開発を行う際には、そのエリアの文化醸成を図ることが必須となります。そうした事情もあり、昨今どこのデベロッパーもこぞってまちづくりにアートを取り入れようと模索していますよね。その背景には、アーティストたちの制作場所が都市の外側に追いやられ、一般社会とかけ離れていってしまうという状況もあると思います。それゆえ、「アートってよくわからない」という拒否反応に結びついてしまうんですね。
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