雲ノ平山荘アーティスト・イン・レジデンス・プログラムは、かつて日本最後の秘境と呼ばれた雲ノ平におけるアーティストたちの表現活動を基点に、改めて社会と自然環境の調和に思いを馳せる試みとして2020年にスタートしました。
本展はプログラム参加アーティストの作品と制作過程を紹介するとともに、アーティストたちの表現を都市の環境下で再現することを通して、さまざまな視点を巻き込みながら「自然とは何か」という問いを深めることを企画した展覧会です。
■「Diffusion of Nature 2023 土と夢」開催概要
【Vol.1 Asakusa】
会 期:2023年4月22日(土)~ 5月7日(日)12:00 - 19:00
会 場:WATOWA GALLERY / THE BOX TOKYO(東京都台東区今戸1丁目2-10 3F)
入場料 :500円(税込 / 冊子付き)
【Vol.2 Shibuya】
会 期:2023年5月5日(金)~ 5月14日(日)12:00 - 19:00
会 場:elephant STUDIO(東京都渋谷区渋谷2-7-4 1-2F)
入場料 :500円(税込 / 冊子付き)
コンセプトムービー:https://youtu.be/GOO8hSHItX0
展覧会HP:https://kumonodaira.com/artist/exhibition_2023.html
展覧会Instagram:https://www.instagram.com/diffusionofnature/
主 催:合同会社雲ノ平山荘
共 催:WATOWA GALLERY(WATOWA INC.)
イベントページ:https://kumonodaira.com/artist/exhibition_2023.html
HP:https://watowagallery.com
Instagram:https://www.instagram.com/watowagallery/
CONTACT: gallery@watowa.jp
■ステートメント
昨年に引き続き、今年も雲ノ平山荘アーティスト・イン・レジデンス・プログラム(以下AIR)の成果展「Diffusion of Nature 2023 土と夢」を開催します。
昨年は2020年、2021年のAIR参加アーティスト13名によるexhibitionを東京にて開催し、多くの方々にご来場いただくことができました。
今年はさらに範囲を拡大し、WATOWA GALLERY(浅草、渋谷)ならびにGASBON METABOLISM(北杜市)のご協力のもと、東京都と山梨県の三つの会場で、22年度のAIR参加アーティストの成果展及び、過去参加アーティストによるグループ展を巡回形式で開催します。
展覧会のタイトルであるDiffusion of Natureは日本語に翻訳すると「自然」の乱反射。
本プロジェクトでは北アルプス最奥地の雲ノ平を旅するアーティストたちの多様な視点を通して「私たちにとって自然とは何か」という問いを掘り下げていきます。
古代における狩猟採集社会の「環境の克服」から始まり、産業革命を経て科学技術の破壊性の自覚から自然保護を訴えるようになった近代、デジタルシステムへの依存により環境(空間・場所性)を知覚するメディア(主体)としての身体性の希薄化が進む現代に至るまで、人間の歴史にはあらゆる「自然」の意味が潜んでいます。
恐れるべき敵であり、資源であり、生活を取り巻く環境であり、守るべき美であり、混沌とした現象そのものであり、生成と分解を促すメカニズムの集合体であり、取り戻すべき自我であり、破壊的な自分たち自身でもあるもの。環境危機や資源の枯渇が叫ばれる現代は、いわばそれらあらゆる自然の意味を経由した上でなお、足元の生活環境を破壊しなければ生活を維持できない文明世界の複雑な矛盾が突きつけられています。
また、私たちにとって、日本社会に固有の自然観は重要なテーマです。
日本は先史時代から自然豊かな島国として、アニミズム的な感性を持ちながら独自の文化や精神世界を形成してきました。しかし、自然が生活の資源であり制約でもあった時代を過ぎ、資源の外部依存化と殖産興業、自由経済に傾斜した近代以降、急激に環境への倫理観を喪失してきた社会の実像をどう見るべきでしょうか。
山小屋に身近な領域では、アウトドアブームとは裏腹な日本の国立公園の(放置された)危機的な保全体制の問題をはじめ、各地の破壊的な再生可能エネルギー政策、国土強靭化計画など、「自然」という価値への創造的な関与とはかけ離れた現実があります。
背景には、日本の自然環境が豊かであるが故に「あってあたりまえ」という意識が優越し、近代の重さに耐えうる、自然をめぐる芸術的、科学的、思想的、経済的な価値観の攪拌・気づきが起こらなかったことが長い影を落としています。生活レベルの自然資源への依存関係の解消と同時に、古来からの美意識や信仰なども迅速に後退し、自律的な価値判断のプロセスを伴わない自由経済や工業化への短期的な過剰適応とも言うべき社会性を追求した歴史的精神構造は、アニミズム美化の限界を示しているとも言えます。
私たちは自然に何を見出そうとしているのでしょうか。
「自然」というテーマはあらゆる価値観や土地、時代の交差点のように私たちの前に横たわっています。
本展では北アルプスの最奥部にある雲ノ平の景観や生態系の実在的な肌感覚を纏った参加アーティストたちの作品と向き合うことを通して、自然をめぐる視点に小さな攪拌を促すことを志向します。そこにある調和や循環や混沌に目を凝らすことで、私たちの感覚は何を捉えるようになるでしょう。またAIRの活動地である山、展示空間である都市、田舎における自然の距離感のずれや共通性はどのようなダイナミズムを描き出すでしょうか。
生命と無機物、肉体と環境、都市と山、概念と実在、現象と物質、明確なようでいて境界線のない、間(あわい)の存在としての「自然」を内包する響きとして、副題を「土と夢」としました。
この活動が、これからの世界に調和と創造性をもたらす、新しい自然観を見出す一助になれば幸いです。
雲ノ平山荘 代表 伊藤二朗
■WATOWA GALLERY / WATOWA INC. 代表 小松隆宏 よりメッセージ
"都会は不自然?"
時間通りに来る電車、
狂わない時計、
直線で覆われた空間、
当たり前ですが、山の中には存在しない。
人間は元々そういった中で暮らしていて、
特に、山と海と挟まれた平野の少ない日本では、大いなる力を持った自然を恐れたり祈りの対象として崇拝し、自然崇拝や山岳信仰が文化として根付いていた。
その日本人的な思考は、神道となり、いまの日本人の暮らしの中で知らぬ間に浸透している。
がしかし、今ほとんどの生活の中で、それを感じながら私たちは生きているのだろうか?
都会に住んでいると、公園に行くと、そこにある木々を見て自然と勘違いする。
キャンプ場に行くとそれは自然だと勘違いする。
実は、人間が構成した平面的な公園を自然として満足していることがほとんどだ。
だが、自然はそんな優しくない。
豊かすぎるというのは、とても残酷で、
近年で起こってきた東日本大震災のような地震、津波、大雨、洪水被害、Covid19によるパンデミックで、自然の猛威をしばしば恐れる。
だが、このような危機の中でも、日本はとても自然が豊かすぎて、たちまちに回復してしまう。
そのため、その傷のことも自然との向き合い方も、どんどん忘れてしまう。
そんな、思考停止の社会から、身も心もフルに使って思考を深めるプロジェクトができないものか??
ARTによって、そういった社会に何か打てないのか?
日本の芸術祭の前身とも言えるアートキャンプ白州(1993〜99)のように、"自然"と"里山(社会)"と"人"あるいは"自然'と"都市社会"との関係を思考するような芸術活動、または、運動はできないものか?
そんな時、日本の秘境と言われる北アルプスの雲ノ平で活動する"伊藤二朗"という男に出会った。
彼がやっているアーティストインレジデンスのプログラムは、決して大きいものではないが、とてもしっかりと"伊藤二朗"の感覚で自立していて、自然の自然たる"秩序のない秩序"と向き合ってる思考の深さを感じるプロジェクトであり、自然の凄さ、優しさ、強さ、危うさ、儚さ、美しさを感じてもらえるような活動をしていると理解できるだろう。
こういった活動や運動を、私たちの世代で小さくても一歩づつ歩んでいけることをとても誇りに思います。
そして、
1人でも多くの方に興味を持ってもらって、この体験が日本人が日本人たる本当の豊かさに気づくことを願っています。
WATOWA INC. / WATOWA GALLERY 代表 小松隆宏
【Vol.1 Asakusa】
東京浅草にある「WATOWA GALLERY / THE BOX TOKYO」では昨年の雲ノ平AIR参加アーティストたち(7組8名)による成果展が行われます。絵画、アニメーション、アンビエントミュージック、コンテンポラリーダンス、写真、バイオアートなど、多様な視点や媒体を通して捉え直された雲ノ平の自然環境が、都市空間に新しい芸術表現の生態系を描き出します。
<参加アーティスト>
Anais-karenin & Tatsuro Murakami/岩崎広大/小林茂太/敷地理/秦景子/原口みなみ/渡邉知樹
出展作家プロフィールはこちらからhttps://kumonodaira.com/artist/exhibition_2023.html#artist
■参加アーティスト
<Anais-Karen & Tatsuro Murakami ユニットにて出演>
Tatsuro Murakami
ギタリスト・作曲家・サウンドアーティスト
Anais-Karenin
美術作家・研究者
岩崎 広大(Hiromasa Iwasaki)
美術作家
小林 茂太(Shigeta Kobayashi)
写真家
敷地 理(Osamu Shikichi)
ダンサー
原口 みなみ(Minami Haraguchi)
画家
秦 景子(Keiko Hata)
絵描き・アニメーション作家
渡邉 知樹(Tomoki Watanabe)
絵本作家
【Vol.2 Shibuya】
渋谷区青山にあるアートスペース「elephant STUDIO」では、2021年までの雲ノ平AIR参加アーティストたちによるグループ展が開催されます。雲ノ平で過ごした時間を消化し、身体に刻み込まれた経験を源として、どのような創造が行われるのでしょうか。この展覧会を通じて、アーティストたちの記憶が呼び覚まされ、多様な自然表現として都市の中で蘇る様子をご覧ください。
また、会場1Fではアーティストトークなどの各種イベント開催、飲食の提供を行う他、歓談スペースや雲ノ平の映像(情報)コーナーなども設置します。
<参加アーティスト>
加々見太地/斎藤帆奈/Shibi/渋田薫/Soar/大東忍/只野彩佳/渡邊慎二郎
出展作家プロフィールはこちらから
https://kumonodaira.com/artist/exhibition_2023.html#artist
■参加アーティスト
加々見太地 (Taichi Kagami)
彫刻家
齋藤 帆奈(Hanna Saito)
美術作家
shibi
画家
渋田 薫(Kaoru Shibuta
画家
soar
画家
只野 彩佳(Ayaka Tadano)
画家
渡邊 慎二郎(Shinjiro Watanabe)
美術作家
■雲ノ平山荘アーティスト・イン・レジデンス・プログラムとは
本プログラムは「アートを通じて社会と自然環境の調和をデザインする試み」として、2020年にスタートしました。通常ならば長期滞在することが困難な北アルプスの最奥地にある雲ノ平山荘でアーティストたちが生活し、日常から遠く離れた環境下で「自然」をめぐる表現を探求します。
資源の枯渇や環境危機などに揺れる現代社会において、私たちは「自然」に何を見出そうとしているのか、多様なアーティストたちの視点を通して思索を深めます。これまでの3年間で、絵画、写真、彫刻、バイオアート、アニメーション、ダンス、音楽、伝統工芸などの多分野にわたる計20名のアーティストを迎え、充実した活動を展開することができました。自分で現地まで歩く能力は必要ですが、生活面は全て雲ノ平山荘がサポートしています。
HP:https://kumonodaira.com/artist/
Instagram:https://www.instagram.com/kumonodairasanso/
■WATOWA GALLERYとは
WATOWA GALLERYは、現代日本のストリートカルチャーやファッション、独創的・先進的なテクノロジーや「ジャパニーズ・フィロソフィー」を取り入れた新しい感性を持つ若手の作家を中心として、アート・コミュニケーションの場を提供するアートプロジェクト/プロデュース集団です。アートがファッションのように親しみやすいカルチャーとなり、ひとりひとりのライフスタイルに溶け込む社会を拓くため、新しい感覚のエキシビションや、アートプロジェクトのプロデュース・演出を行い、アートに触れるタッチポイントを拡大します。
現在も国内外で評価されている主要なアートムーブメントの多くは、ミュージアムの外で、そして多様なジャンルのアーティストと支援者との交流によって生まれています。わたしたちは特定のアートスペースを持たず、あらゆる空間をギャラリーと捉え、アートをミュージアムからコミュニティへ、都市へ、住空間へ開放し、ミュージアムの外からさまざまな分野のプロフェッショナルと横断的なアートプロジェクトを発信していきます。さらに、日本の若手アーティストの活躍と日本の若手コレクターの参入をサポートし、アーティストと支援者の交流を促進します。
WATOWA GALLERYを媒介とした新しいコミュニケーションやコミュニティの育成によって、次の時代のアートシーンを創造し、市場の活性化を目指します。2019年より特定の場所を持たないプロデュース集団としての活動をしておりましたが、2022年9月より、初のWATOWA GALLERYの本拠地となる WATOWA GALLERY / THE BOX TOKYOを浅草・今戸にローンチ。
HP: https://watowagallery.com
Instagram: https://www.instagram.com/watowagallery/
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