
当たる確率は100分の1。そんな地震の発生情報をどう生かし、社会の混乱を抑えながら、ひとりでも多くの人の命を救うか。慎重で多角的な検討が求められる。
北海道から東北北部の太平洋沿岸に大きな被害を与えると予想される日本海溝・千島海溝での地震に備えようと、内閣府の有識者会議が検討を進めている。地震発生の可能性が高まったとき、住民に警戒を呼びかける「臨時情報」などを出す案が有力だ。
東海から九州沖にかけての南海トラフで起きる地震では導入済みの対策だ。しかし、両地域は地震の特性も観測体制も異なり、一筋縄ではいかない。
地震学者らでつくる「異常な現象の評価基準検討委員会」は10月、日本海溝・千島海溝沿いでマグニチュード(M)7級の地震が起きた後、続いてM8以上の地震が発生する恐れがあると注意喚起することは可能――とする報告書案をまとめた。
1963年のM8・5の択捉島南東沖地震の18時間前や、2011年の東日本大震災の51時間前に、それぞれの震源付近でM7級の地震があったことなどを根拠としている。
期待をもたせる内容だが、問題も少なくない。
今でも大きな地震があると、気象庁は同程度の揺れにしばらく警戒するように呼びかける。「臨時情報」はこれとどう異なり、どこまで踏み込むのか。
また、東北・北海道沖は、南海トラフの想定震源域と違って地震が多い。M7級は数年に1度の頻度で起きていて、その後、M8級以上も発生するのは100回に1回程度という。
臨時情報を出して避難を呼びかけるなら、99%は空振りという覚悟で取り組むことになる。高齢者や病人を安全な場所に移動させる行為が無駄に終わる事態が繰り返されれば、せっかくの情報も批判や不信の種になりかねない。
加えて、前ぶれ抜きにM8級以上の地震に見舞われる恐れの方が大きい。情報の出し方次第で、「巨大地震の前には臨時情報が出る」「言われていた警戒期間が過ぎればもう安心」といった誤解が広がると、防災意識が緩み、被害をかえって大きくしてしまう恐れをはらむ。
情報を隠さず、積極的に発信する重要性は言うまでもない。その基本認識に立ったうえで、制度導入に伴うメリット、デメリットを見据え、後者を極力小さくしていくために何をすべきかを探らねばならない。
最新の地震学の知見ばかりでなく、情報の受け手である住民の心理や行動パターンにも十分に目配りした議論を望みたい。
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