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Friday, December 3, 2021

137億円投じた農地情報公開システム、ユーザーの約8割が日常利用せず - ITpro

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農林水産省の補助事業で137億円かけて整備した農地情報公開システム。利用が進まず無用の長物と化していたことが2021年10月に明らかとなった。会計検査院の調べでは、ユーザーの約8割は日常業務として利用していなかった。周知や研修が不十分だったことに加え、稼働初期の不具合で評判を落とした。農林水産省は研修の強化やデータ入力の簡易化などで改善を急ぐ。

 農林水産省が137億5886万円かけて整備した農地情報公開システムが日常業務で2割程度しか利用されていない――。会計検査院の調べでこうした実態が2021年10月に明らかとなった。

 農地情報公開システムは全国の農地情報を一元管理し、Webサイト「全国農地ナビ」で公開するためにクラウド上に構築したシステムだ。農林水産省の2013年度補正予算で構築に着手し、全国の農業委員会を束ねる全国農業会議所を事業実施主体として整備を進めてきた。もともとは各市町村の農業委員会が個別に構築した農地台帳システムなどで農地情報を管理していたところ、全国共通のシステムで登録から公開まで一括して行えるようにした。2016年4月に整備を終え、その後、数度にわたって改修してきた。

 だが会計検査院が17道県にある783の農業委員会を対象に利用状況を調べたところ、47.1%に当たる369の農業委員会は既存の農地台帳システムのみを利用していた。さらに32.0%に相当する251の農業委員会は既存の農地台帳システムを主として使い、公表データの更新時などに限って農地情報公開システムを利用しているとした。つまり、79.1%は同システムを日常業務で利用していなかった。

 会計検査院の指摘を受け、金子原二郎農相は2021年10月26日の記者会見で「改善を図るように指導していく。もう1回よく調査をして、確実にシステムが機能するように取り組んでいきたい」と釈明に追われた。同省は研修の強化やデータ入力の簡易化などで利用率の底上げを図っていく構えだ。

システム全体が無用の長物に

 農地情報公開システムは利用者別に大きく3つの機能がある。①各農業委員会等利用システム、②格納システム、③全国農地ナビだ。

 ①は全国の農業委員会向けで、農地情報を入力・管理するためのシステム。議案書作成や統計処理などの機能も備える。②は全国農業会議所向けとなり、①で登録・更新された農地情報を集約したシステムである。農地台帳や農地地図の検索・閲覧、統計処理などの機能を提供する。①はLGWAN(総合行政ネットワーク)経由、②は閉域網(IP-VPN)経由でそれぞれアクセスし、扱うデータには業務用の非公開情報も含まれる。

 これに対してインターネット経由でアクセスする③では、②のうち公開用データのみを扱う。農業に従事する人やこれから従事したい人が全国の農地情報を検索できる。従来は調べたい市町村の農業委員会まで出向き、農地台帳を閲覧して調べる必要があった。

図 農地情報公開システムの構成図

図 農地情報公開システムの構成図

各農業委員会等利用システムの利用が進まず、情報の更新が滞った

[画像のクリックで拡大表示]

 農地情報公開システムは①~③の機能が密に連係している。農業委員会が①を日常的に利用して初めて、②で全国農業会議所などが業務に活用し、③で農地情報の最新状況をリアルタイムに検索・閲覧できるというわけだ。

 ところが、会計検査院が17道県にある783の農業委員会を対象に調べたところ、2020年度に農地情報を逐次更新していたのは187(23.8%)の農業委員会だけだった。343(43.8%)の農業委員会は初期登録から一度も更新していなかった。最も肝心なユーザーである農業委員会に使われず、システム全体が無用の長物と化してしまった。

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