株式会社日立システムズは27日、映像や画像を含む地域の情報をクラウドで一元管理し、時間や場所を問わず情報の共有を可能にする「エリア情報サービス」を発表した。地域防災を支えるエリア情報データ連携ツールとして利用できるという。
「エリア情報サービス」は、IoTを活用して特定地域のセンサー・映像情報をリアルタイムに収集・把握・共有して現場の情報を可視化し、地域防災や観光促進など、さまざまなシーンで活用できるように支援するクラウドサービス。
クラウドサービスのため、従来のシステム開発に比べて安価かつ容易に導入できるのみならず、インターネットに接続可能な端末さえあれば、さまざまな場所・デバイスから情報の登録や確認を行える点が特徴という。また、IoT機器を活用して各種センサーなどで収集した情報の登録や、スマートデバイスなどで撮影した映像・画像といった情報を簡単に登録でき、災害発生時に状況の早期把握と共有が図れるとした。
このほか、災害現場の情報を地図情報と連携して表示する機能を備え、対策本部で地域全体での災害状況を視覚的に把握できることから、迅速な意思決定を支援可能。さらに、映像や画像を登録する際、文字情報を追加できる「タグ付け機能」を備えており、特定のタグが付いた映像や画像のみを検索可能にした。これにより、同様または関連する災害の映像や画像をすぐに抽出・確認でき、過去の被災状況との比較も容易に行えるとしている。
武蔵野市が導入、迅速な意思決定を可能にする体制を構築
先行導入事例として、東京都武蔵野市が2021年3月に、それまでの独自の防災情報システムに替わって「エリア情報サービス」を導入した。既存システムでは、入力作業は防災課職員のみに限られていたほか、無線や電話、FAXで届けられる情報を防災課職員が取りまとめて行っていたため、災害が同時に広範囲で発生した場合、処理が追いつかない可能性があったという。
これに対して、「エリア情報サービス」では情報共有作業が効率的に視覚化され、最低でも5分はかかっていた、災害情報を取得してから共有するまでの時間が、1分以内で済むようになったとした。
加えて、インターネットに接続可能な端末があれば職員が現場からでもリアルタイムにシステムにアクセスし、写真による報告ができるので、正確な情報による意思決定の迅速化が図られたとしている。
また、システムが庁舎内に構築されていたことから、災害により庁舎が被害を受けた場合にはシステムが利用できず、災害応急対策および応急措置を実施できなくなる懸念もあったが、クラウドサービスの利用によって、この懸念も解消されている。
観光や製造など、地域防災以外でも活用可能
なお「エリア情報サービス」は、地域防災以外の用途でも活用可能とのことで、日立システムズでは、地域や施設に設置されたカメラの映像やGPSによる位置情報など、ほかの情報と組み合わせることにより、地域の混雑解消や観光促進、製造現場での部品位置把握・作業の滞留状況改善、物流業における車両の現在地情報や配送地点の登録による効率的な運送計画の立案など、さまざまなシーンに適用できると説明した。
例えば、カメラ映像から人流・密度の情報を収集・分析し、特定地域の混雑を緩和する施策の検討に利用したり、地域の観光施設や店舗など観光情報を一元管理し、観光客に対してデジタルサイネージなどを通じて各種情報を配信することで、店舗の混雑状況、天気や来訪客の属性に合わせた観光プランを提供したり、といった活用法が考えられるという。
武蔵野市においても、道路管理課や水道部、公園管理の課(緑のまち推進課)など、防災課以外の地域の現場を管理している他部門で、地図情報と連携して情報を管理できる点が評価されたとしている。
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