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Wednesday, September 15, 2021

真偽不明の情報・陰謀論の拡散、どう対処?専門家に聞く…[虚実のはざま]第4部 深まる断絶<5> - 読売新聞

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 真偽不明の情報や陰謀論の拡散が、社会に深刻な影響を及ぼすリスクが、このコロナ禍で改めて浮かび上がった。どう対処すべきなのか。専門家に聞いた。

 問題の背景にある人間の心理として、まず考えられるのが「感情(不安)の正当化」という作用だ。

 コロナ禍が長引き、漠然とした不安を抱える人が多い。だが人は理由が分からないと落ち着かず、なんとか原因を突き止めようとする習性がある。

 ネットで検索すれば、大げさな表現で「ワクチンを打つと危ない」と主張する情報があふれている。根拠がなくても「そうだったのか」という気持ちになれ、一時的な納得感を得られる。

 社会が緊張状態にあれば、判断力が弱まりやすく、十分に確かめずに飛びついてしまう傾向に拍車をかけている面もある。

 もちろん、玉石混交のネットの海の中から真偽を見極めることができればいい。しかし、コロナを巡って拡散する真偽不明の情報には、いかにも科学的で信ぴょう性があるように見える海外のデータなどが添えられているものが多い。専門知識がない人が正確に判断するのは難しいだろう。

 「確証バイアス」という認知のゆがみも影響する。人間の脳には、自分の意見や願望に合致する情報を集めようとする作用があり、情報が偏ってしまう。

 SNSの閉じた空間では、何かを発信すると、反響するように似た意見ばかりが返ってくる「エコーチェンバー」という現象が起こる。大多数の人には怪しげな情報でも、その空間にいる人たちは「みんなが言っているから正しいに違いない」と錯覚しやすくなっている。

 「私は真実を知っている」という優越感や、「みんなのために」という、ある種の正義感から情報を拡散させようとしたり、誤りを指摘されると攻撃的になったりする傾向もある。

 こうした落とし穴にはまるリスクは誰にでもある。大人が認識するとともに、学校現場でも時間を取って教えていく必要がある。

     ◇ 

 今回の問題は、不確かな情報の大量拡散が想定される中、国はどう対策すべきかという課題を突きつけている。

 デマを流す人の動機は、大きく分けて〈1〉金〈2〉イデオロギー〈3〉自分の過去の主張の正当化〈4〉注目を集める――の四つだと考えられている。極端で感情をあおるような言葉を使えば、根拠のない話でも大量に流布できてしまう。これに対し、正確な情報発信には調査や確認の手間も時間もかかる。その間にデマが広がってしまえば、打ち消すのはより困難になってしまう。

 東京電力福島第一原発の事故でも、 被曝ひばく の影響で「福島でがんなどの健康被害が多発している」といった誤った情報が広がった。

 福島県や国連科学委員会、多くの研究者が否定し、国もデータを公表したが、誤解は消えず、今もSNSに書いている人がいる。

 コロナやワクチンに関しても国のデマ対策は十分ではない。デマの拡散状況を詳細に分析し、どうすれば打ち消せるか有効な方法を研究する必要がある。

 「ワクチンは人口削減が目的」といった陰謀論は、より対応が難しい。「政府やメディアが真実を隠している」という不信を広める言説とセットになっているからだ。こうした考えに完全に傾倒した人に対し、科学的知見に基づいた公的機関の情報を示しても、その人は「あれはウソだ」という側の話を信じる。

 どんな問題でも人によって意見の違いは当然あるが、事実に基づいて議論するのが健全な社会だ。しかし、事実が共有されないと、対話が成り立たなくなる。これは危険なことだ。

 求められるのは、国などの公的機関が自らの発する情報の信頼性を高める努力だ。平時から意思決定の過程やデータをできる限り公開し、透明性を高めることが欠かせない。

 

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