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Friday, May 28, 2021

情報BOX:FRBが検討加速する中銀デジタル通貨の重要ポイント - ロイター (Reuters Japan)

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[27日 ロイター] - 米連邦準備理事会(FRB)は最近、中央銀行デジタル通貨(CBDC)に関する問題の検討作業を加速させつつある。世界の準備通貨であるドルの発行元であるFRBにとって、これは重大な使命だ。

 米連邦準備理事会(FRB、写真)は最近、中央銀行デジタル通貨(CBDC)に関する問題の検討作業を加速させつつある。世界の準備通貨であるドルの発行元であるFRBにとって、これは重大な使命だ。2019年3月、ワシントンで撮影(2021年 ロイター/Leah Millis)

先週にはパウエル議長が異例にも、この夏に米国のCBDC発行を巡る賛否両論をまとめた「ディスカッション・ペーパー」を公表する計画をビデオメッセージ形式で示した。さらにFRBの金融安定・決済システム担当責任者のブレイナード理事は24日、急速に発展するデジタル決済分野があまりも細分化した場合、どういったリスクが生じるかを具体的に説明。中国など幾つかの外国の中銀が既に独自のデジタル通貨発行に乗り出している現状を踏まえると、米国が国際的な基準を整備するための話し合いの場に加わることが重要だと強調した。

FRBのこうした取り組みでポイントとなる要素は以下の通り。

◎そもそもCBDCとは何か

CBDCは、運営が脱集権化されて価格の振れが大きくなりやすいビットコインのような暗号資産(仮想通貨)とは異なる。CBDCの場合、保有者が企業、個人、政府の誰であっても、発行元の中銀に直接請求権があり、現金と同じだ。

◎米国がCBDCを発行するメリットは

ブレイナード氏が述べたように「いかなる決済手段の技術革新にとっても今後の道標になるべき原則は、既存の決済システムを土台に改善を加えるべきだということ」になる。

そのため、CBDCは現在高額の手数料などで銀行システムから締め出されている人々も利用できるようになるかもしれない。新型コロナウイルスのパンデミック期間に各世帯向けに行われた現金給付のような、あるいは毎月の年金小切手などの政府による支払いをより効率化する手段にもなり得る。またステーブルコインといった民間のデジタル通貨が普及していくとともに、FRBが保証するCBDCは消費者や企業にとって安全な代替物になる可能性がある。ブレイナード氏によれば、民間業者は常に通貨発行に伴う債務返済を担保できるとは限らないが、FRBはいつでも可能だからだ。

◎どんなリスクがあるか

ドルは世界の準備通貨であるため、米国は国際金融資本市場で借り手として特権的な地位を得ている。国際通貨基金(IMF)のデータによると、昨年末時点で世界全体の公的外貨準備高の6割近くをドルが占めた。中国人民元は2.25%にすぎない。

米国がCBDCの開発や導入で何かしくじれば、そうした地位が損なわれ、財政に悪影響を及ぼしかねない。連邦債務が21兆ドル強に上る以上、FRBにとってはこの点こそ、最優先で配慮が必要になる。

ドルはクロスボーダー決済手段としても圧倒的な存在で、「デジタルドル」が不安定化すれば、世界経済全体が混乱する恐れがある。

逆に米国が手をこまねくことにもリスクが伴う。ブレイナード氏は、民間のデジタルプラットフォーム利用が拡大するのにつれて、決済システムがあまりに細分化される可能性がると警告した。まさに19世紀ごろ、個々の銀行がめいめいに独自紙幣を発行し、望ましくないボラティリティー増大や決済の非効率化をもたらした事態の再現だ。

ブレイナード氏は「民間のデジタル通貨が優位にある環境は消費者保護や金融安定に絡むリスクを生み出すかもしれない。なぜならこれらの通貨は価値が不安定で、一方向に暴走する危険があるからだ」と解説した。

◎FRBの取り組みの現在の位置は

パウエル氏が明らかにしたディスカッション・ペーパーの公表に加え、FRBは独自の調査や、国際決済銀行(BIS)などと協力した検討も進めている。

ボストン地区連銀は、マサチューセッツ工科大(MIT)とともにCBDCに使えそうな技術を研究するプロジェクトを何年も前から進めている。早ければ7月に最初の成果として、論文や何らかのオープンソースコードを発表する見通しだ。

◎FRBは独力でデジタル通貨を発行できるか

それは不可能だ。パウエル氏も、CBDCが開発され得る前に議会による法制化が必要だとの立場を明確にしている。上院銀行住宅都市委員会のブラウン委員長など一部の議員は、金融包摂(ファイナンシャル・インクルージョン、幅広い人々に金融サービスの恩恵を届けること)の効果を上げる方法として、CBDCに関心を示している。ただ議会の立法手続きは長い道のりになりそうだし、発行するかどうかについての公式な決定は何もされていない。

◎他国の取り組み状況は

アトランティック・カウンシルの調べでは、現在米国を含めて75カ国がCBDCの研究や開発に携わっている。主要国の先頭を走るのは中国で、目下デジタル人民元の試験運用に取り組んでいる。来年の北京冬季五輪前に利用拡大を図る計画だ。バハマの中銀は昨年10月、世界で初めて国全体としてCBDCを正式に発行した。

FRBのパウエル氏は、FRBとしては急がないと発言。先月、「スピードよりも正しい方向付けの方がはるかに大事だ」と語った。

◎銀行システムを変容させるか

その可能性はあるが、まだはっきりしない。

今のところ大半の個人や企業は商業銀行にお金を預けている。理論的に考えると、CBDCが誕生すれば、もはや彼らが銀行に預金する必要はないかもしれない。一部の調査研究は、特に経営基盤が弱いと見なされた銀行から多くの資金が出ていく恐れがあると示唆している。

一方ブレイナード氏によると、別の研究結果ではCBDCが銀行との取引コストを引き下げ、預金総量が増えてもおかしくないとの見解も出てきている。

ブレイナード氏は米国のCBDCについて、銀行の金融仲介機能が損なわれるのを防ぐ措置を盛り込んだ形で設計する必要があると指摘した。これは銀行がFRBの金融政策運営において重要な役割を果たしている点から、とりわけ大きな意味を持つ。

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