無料通信アプリ「LINE(ライン)」の利用者情報が中国企業から閲覧できた問題にからみ、同社以外でも国内大手企業の少なくとも7社で、保有する個人情報について、中国に移転したり、中国企業が閲覧できたりする状態になっていることが、産経新聞社が行った117社の企業アンケートで1日、分かった。中国では企業が保有する情報を政府が強制的に入手することができる。個人情報の取り扱いに関心が高まる中、LINEの問題が「氷山の一角」である可能性が高まった。
中国政府が強制収集可能
7社は「個人情報が中国に移転されたり、中国企業が個人情報にアクセスできたりするような状況はあるか」との問いに対して、「ある」と答えた。いずれも中国企業に業務委託する際に個人情報が移転・閲覧できるようになっていた。金融など複数の業種にわたる各社はアンケートで「法令を順守している」「秘密保持契約を締結している」など情報管理に問題がない点を強調する。
ただし中国では2017年に「いかなる組織と公民も国の情報活動に協力しなければならない」とする国家情報法が施行され、個人情報を中国企業が入手した場合、中国政府が強制的に収集することが可能だ。民間が結ぶ秘密保持契約には「国家情報法の下では意味がない」(政府関係者)といった指摘もある。
また、大半の企業は中国への情報流出リスクはないとしたが、中国にコールセンターを置いているケースや、中国以外の業務委託先が中国企業に孫請けさせるケースなどが、集計から漏れていることも想定される。
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設問「無回答」も2割
明治大ガバナンス研究科の湯浅墾道(はるみち)教授は、多くの日本企業が中国に進出している状況を考慮すると「把握できていないだけの可能性もある」と述べ、「総点検によるリスクの洗い出しが必要だ」と指摘する。
一方、この設問を無回答とした企業も約2割にのぼった。スマートフォンなどで記録される個人の移動や決済などの情報が広告などに広く活用されるデータ社会では、企業が個人情報をどう管理して用いるかの説明は必須だが、情報開示に後ろ向きなケースも目立った。
景気回復「令和4年度以降」63%
新型コロナウイルスの感染拡大が続く中、国内景気がコロナ禍前(令和元年10〜12月期)の水準に戻る時期については、約63%の企業が4年度以降と答えた。昨年12月に実施した主要企業アンケートから約4ポイント増えており、企業はコロナ禍の不確実性などを理由に、景気回復の遅れに警戒感をさらに強めている。輸出が堅調な機械や自動車など製造業の一部が今年度内の回復を予測する一方、対面サービスの百貨店や外食などが景気回復の大幅な遅れを指摘するなど、業種間での差も鮮明になっている。
回復時期を4年度(4年4月〜5年3月)と回答した企業の割合は約5割。「当面は対面サービスを中心に個人消費に対する下押し圧力が残り、景気回復は緩やかになる」(金融)などと、今年度内の景気回復は難しいとの見方だ。
特に見通しが厳しかったのは移動制限や営業自粛などのあおりをうける運輸や小売り、外食の各社。新型コロナについては「変異株の拡散やワクチンの有効性の変化」(外食)といった不確実性への懸念を抱く。
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「変異株などリスク高い」
回復時期が5年度以降にずれ込むと予測したのは約11%。さらに約2%の企業は「変異株など感染拡大リスクが高い」(小売り)などとして、景気回復が6年度以降に遅れると答えた。
一方、今年度内の景気回復を予測する企業は輸出や生産が堅調な製造業を中心に約24%。中国などでの経済活動再開で「輸出が好調」(機械)といった指摘や、「ワクチンの普及に伴い個人消費が持ち直す」(商社)との声があった。
もっとも今回の企業アンケートは4月上旬から下旬に実施し、政府が4都府県に3度目の緊急事態宣言の発令を正式決定した4月23日より前に多くの企業が回答している。今後の感染状況次第では、さらに企業心理が悪化する懸念もある。
アンケートは4月上旬から下旬にかけて選択式と記述で行い、117社から回答を得た。
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