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Thursday, April 8, 2021

デジタル法案 情報保護を強化すべきだ | 熊本日日新聞社 - 熊本日日新聞

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 デジタル庁創設や個人情報保護法の改正などを含むデジタル改革関連法案の国会審議が大詰めを迎える。成立すれば個人情報などの一元的な管理が進んで利便性が高まるとされる一方、国による個人の監視や統制に結びつかないかとの懸念が拭えない。個人情報保護を強化するとともに、際限のない利用につながらないよう歯止めをかけておかなければならない。

 法案は、デジタル庁設置、個人情報保護法改正、マイナンバーと預貯金口座の連携、押印手続きの廃止など、関連する約60の法律を束ねている。菅内閣は看板政策を実現するための重要法案と位置付けており、6日に衆院を通過。政府、与党は参院での早期可決、成立を目指している。

 法案の背景には、新型コロナ対策で打ち出した一律10万円の特別定額給付金をめぐってオンライン申請が混乱したことや、押印を伴う行政手続きがテレワーク推進の妨げになったことなどがある。政府は法改正によって、国、自治体、企業ごとに異なる個人情報保護ルールが一本化され官民のデータ共有が容易になるほか、公的給付の受け渡しがスムーズになり、マイナンバーカードの機能をスマートフォンに搭載できるようになる、などの利点を挙げている。

 だが、国会審議が進むにつれて明らかになったのは、情報利用に対する歯止めの弱さである。

 個人情報保護法の改正案では、これまで民間、行政機関、独立行政法人の三つに分かれていた保護法を一本化。民間企業などの個人情報利用を監視してきた「個人情報保護委員会」が、行政機関や独法なども監視するようになる。しかし、LINE(ライン)の個人情報が中国で閲覧できる状態になっていた問題でも検査が遅れたように、保護委員会は現在でも体制の弱さが指摘されている。事務局職員の数も多いとは言えず、監視機能を強化する必要がある。

 また、行政機関は「相当な理由」がある場合、本人の同意なしで個人情報の目的外利用や提供ができるとされている。にもかかわらず保護委は、問題があった際に行政に「勧告」する権限しか持たされない。民間には立ち入り検査や「命令」ができるのに比べ、改正案はバランスを欠いている。

 国より先行し、それぞれ条例を制定してきた自治体ごとの個人情報保護規定も、法案によって全国共通のルールに改められる。政府は、災害時の避難者情報などが共有しやすくなるという。しかし、個人情報保護の程度が弱まる懸念のほか、自治体の独自性や自主性を損なう恐れが持たれている。日本弁護士連合会は声明で「憲法が定める条例制定権に対する大きな制約ともなりかねない」と警告している。

 衆院内閣委員会は政府に対し、行政の情報利用の「相当な理由」を厳格に認定することや、保護委の監視を求めることなど28項目を付帯決議した。多くの課題が残っていることの証左である。参院でさらに徹底した審議を求めたい。

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