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Friday, November 6, 2020

「個人情報保護を強化する」という米国民の選択:住民投票で静かに可決した法案の重み - WIRED.jp

米大統領選挙の最も重要な結果が依然として流動的であるなか、カリフォルニア州とミシガン州では11月3日(米国時間)、有権者による投票で新しいプライバヴァシー法案が可決された。2018年のプライヴァシー法の規定を拡張するカリフォルニア州の「Proposition 24」と、電子データの押収前に捜査令状の請求を警察に求める断片的な命令を一本化したミシガン州の「Proposition 2」である。

個人のプライヴァシーの強化は現代の政治において、党派を越えて考えが共有されていると断言できる数少ない取り組みのひとつである。しかし、これらふたつの法案の可決は、こうした伝統的な連携関係を揺るがすものとなった。アメリカ自由人権協会(ACLU)がカリフォルニア州の法案の反対に回った一方で、警察署長協会がミシガン州の法案を支持したのである。

こうした政治的な動きが何らかの兆候であるとすれば、2020年以後のプライヴァシーを巡る動向は少し変わった方向性を示しながら同じことが続けざまに起きる。そして驚くほど党派を越えていき、非常に複雑なものになるはずだ。

新たなプライヴァシー法の狙い

今回、カリフォルニア州の「Proposition 24」では、18年のカリフォルニア州消費者プライヴァシー法(CCPA)の後継として州プライヴァシー権利法(CPRA)が承認されている。欧州の一般データ保護規則(GDPR)と並行して発案されたCCPAには、フェイスブックやグーグル、匿名で活動する無数のデータブローカーの規制回避を可能にする抜け穴があり、プライヴァシー擁護を主張する人々は不満を募らせていた。

具体的には、CCPAではターゲット広告の多くの形式が対象外となっている。このため同意なしにユーザーの個人データを収集して共有するという、まさに同法が排除を意図している行為が原則的に許容されている。

またCCPAは、すでに業務負荷の多い同州の司法長官ひとりに施行が委ねられている。こうした事態を許容したことで、CCPAの起草者であるメアリー・ストーン・ロスとアラステア・マクタガートとの間には亀裂が残った(マクタガートはCPRAの共同起草者であり、ロスはCPRAに反対だった)。

企業はわたしたちのデータをさまざまな方法で収集し、利用することで利益を得ている。ところが実際のところ、データの販売によって直接的に金銭をやり取りする事例は少ない。可決されたCPRAは、データを「販売」ではなく「共有」していると主張することで規制を回避してきた企業に狙いを定めたものだ。

ユーザーによるデータ共有の拒否が可能に

CPRAは、データの共有、販売、収益化の3つの概念を組み合わせたものである。同法では文字通りの意味でデータを「販売」しているかどうかにかかわらず、どのようなデータをユーザーから収集しているのか、誰にそのデータを販売または共有しているのかを開示することが企業に求められる。また、ユーザーが自分のデータの収集をオプトアウトできるようにすることが義務づけられている。

CPRAでは、人種、性別、宗教、健康データなどを含む区分として、「センシティヴな個人情報(Sensitive Personal Information=SPI)」が新たに設けられた。SPIを収集、共有、販売しようとする企業は、ユーザーにその旨を開示しなければならない。また、通知を受けたユーザーは、企業によるSPIの共有を拒否することができる。なお、この法律の施行のために新設されたカリフォルニア州プライバシー保護庁には、1,000万ドルの予算が割り当てられる。

2018年のCCPAの文言では、トラッキングを一律に拒否するのではなく、訪問するサイト単位でトラッキングをオプトアウトすることをユーザーに求める余地が企業に残されていた。これに対してCPRAでは、トラッキング拒否(Do Not Track)機能のような一律のオプトアウトが可能である上、選択的にトラッキングを許可することもできるようになっている。

「プライヴァシーを金で買う」という懸念

CPRAに反対しているプライヴァシー擁護派は、こうした状況を多くの“一進二退”の動きのひとつとみている。というのも、施行まで2023年まで待たねばならず、売上高2,500万ドル未満の企業は対象外となる。さらにエクスペリアンやエキファックス(Equifax)のような大手信用調査会社は大部分の条項が免除され、企業はデータを共有しないことを選択した消費者に対して特典や割引の提供を差し控えることもできる。

なかでも最後の点は論争の的になっている。長らくプライヴァシー保護の立場を強く打ち出してきた電子フロンティア財団(EFF)と北カリフォルニアのACLU支部は、ともにProposition 24に反対した理由としてこの点を挙げている。現金や割引と引き換えにデータを渡すことを奨励する、つまり「プライヴァシーを金で買う」ような構造が助長されるのではないかと、両者とも懸念を抱いているのだ。

ACLUは10月のブログ記事において、経済的弱者が安価な料金と引き換えにデータの提供を余儀なくされる一方で、経済的に恵まれた利用者にはデータの提供を提供を拒否する余裕があると指摘した。その上で、同法が特に有色人種のコミュニティにとって有害である可能性があると主張している。これはSPIの新しい区分がもたらすプライヴァシー保護と相反するものだ。

進歩主義団体「Consumer Watchdog」のエグゼクティヴ・ディレクターであるカルメン・バルバーなど、CPRAの最大の支持者らは同法が完璧ではないことを認めている。その上で、さらにプライヴァシー保護を強化する新しいモデルを示そうとしている。

「わたしとしては一度ですべての戦いに勝利できればと思いますが、現実の世界ではめったに起こらないことです」と、バルバーは言う、そこで同法が将来の改正を可能にするために特別に策定された法律であることに注目し、こう指摘する。「おそらくCPRAは、全国規模のプライヴァシー改革のモデルになると思います」

しかし、段階的な改正は複雑さを生み、大規模なロビー活動や法的手段をもつ企業が悪用できる潜在的な弱点を生む可能性がある。18年のCCPAを「わたしのデータを売らないでほしい」という人々の全体的な意思とするなら、そこから企業は2年にわたって「販売」「わたしの」「データ」という言葉の意味を曖昧なものにしてきたのだ。

CPRAのような法律が規制対象とされるアドテクノロジーのエコシステムと同じくらい複雑であることが、透明性という全体的な目標に寄与するのか──。この問いに対してConsumer Watchdogのバルバーは、単純な文言なら複雑な文言より多くの抜け穴がつくられると指摘している。

「単語の数の問題ではありません。実現したいことが正確に説明されているかどうかの問題なのです」と、バルバーは語る。「法令は複雑になることもあります。複雑さはよくないものとされていますが、企業にはこの法律を守ってもらわなければならないのです」

いま住んでいる世界に合わせた改正

一方、ミシガン州のProposition 2は州憲法を改正し、法執行機関が個人の「電子データまたは電子通信」を押収するに先立ち、捜査令状を取得することを義務づける。新しいテクノロジーは、大量の人々のデータを捕捉する監視網をつくり出した。その多くは、犯罪の容疑とは無関係である。

Proposition 2は、監視用ツール「スティングレイ」のミシガン州警察による使用に反対する立場から導入された。スティングレイとは基地局の“コピー”をつくって基地局を欺くデヴァイスで、携帯電話の位置情報だけでなく、潜在的にはユーザーの身元を特定する情報を送信させることもできる。

この法案の可決は意外にも、ミシガン州のACLU支部とミシガン州警察署長協会の双方から支持を集めた。個人的な電子データに対する警察のアクセスはいくつかの判決で制限されているが、Proposition 2では新しいテクノロジーにも適用される包括的な要件が策定されている。

「これにより、想像もできないような新しい技術が将来的に登場した場合に、より強い立場をとれるようになります」と、ACLUのミシガン州政策ストラテジストであるメリッサ・コヴァックは言う。「この法律は、わたしたちがいま住んでいる世界に合わせて改正されたのです」

Proposition 2は既存のルールに基づき、ポケベルや携帯電話といった新しいテクノロジーの出現に合わせて内容を拡張するのではなく、電子データのための一元的な法的基準を定めている。コヴァックが指摘するように、ニューハンプシャー州とミズーリ州でも同様の措置が可決されている。

「ほかの州が望んでいるのであれば、異論はないはずです」と彼女は語る。「きっと望んでいるはずなのです」

※『WIRED』によるプライヴァシーの関連記事はこちら

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