データアナリティクスの専門企業であるSAS Institute Japanは2020年11月25日にオンラインイベント「SAS FORUM JAPAN 2020」を開催した。本稿では、その中でタイヤから得られるデータを価値として転換することを目指した「TOYO TIRE タイヤセンシング技術コンセプト」について説明したTOYO TIRE 技術開発本部 先行技術開発部 榊原一泰氏の講演内容をお伝えする。
TOYO TIREが目指す「タイヤ力」の可視化
TOYO TIREは1945年創業のタイヤメーカーで、2020年は創業75周年を迎えている。2019年度の連結売上高は3774億円で、売上高の88%タイヤ事業が占めている。その中でも65%が海外での販売が占めるなどグローバルで存在感を示している。「TOYO TIRES」「NITTO」「SILVER STONE」の3つのタイヤブランドを展開し、市販車向けからトラックやバスなど業務用車両向けまでさまざまなタイヤのニーズに応える製品を展開している。
自動車業界ではCASE(コネクテッド、自動運転化、シェアリング/サービス、電動化)による大きな変化に直面している。この中でタイヤに求められることも変化する。「CASEを読み解けば、コネクテッドは『つながる化』や『インテリジェント化』、自動運転化や電動化は『車両制御支援』、シェアリング/サービスは『管理/メンテナンス支援』などに行き着く。そこでタイヤセンシング技術の開発に取り組んだ」と榊原氏は語る。
タイヤからの情報活用では、タイヤの空気圧や温度などの情報を取得しパンクによる事故防止を図るTire Pressure Monitoring System(TPMS)が以前から存在している。しかし、今後は路面判別や荷重、摩耗、異常など、より多くの情報取得が求められることになる。こうした新たに取得すべき情報の価値として、TOYO TIREでは独自の概念「タイヤ力」を位置付ける。
榊原氏は「路面判別や摩耗や荷重などの情報を取得してどういう意味があるのかを考えると『この状況で安全に曲がれるのか』や『安全に止まれるのか』ということを知るということだ。つまり、タイヤ力というのはタイヤ挙動時のパフォーマンスをリアルタイムに知ることができるということである。これこそがクルマの構成要素の中で唯一地面に触れているタイヤの持つ価値だと考えた」と語っている。
これを具体的に可視化するために、タイヤ力(タイヤのグリップ力の現状と限界)を点と円で示すモデルを考えた。現在の操作情報を点、摩耗や荷重による限界を円として示し、円内に収まれば問題なく操舵や停止が可能で、円の外に出るとこれらが難しくなるというものだ。「シミュレーション上ではうまく示すことができたが、実際のクルマで実現するのが目標だ」(榊原氏)。
センサー情報などから予測モデルを構築
TOYO TIREでは現在、実車でこれらの仕組みが機能するように開発を進めているところだ。タイヤに搭載したセンサーによるセンサー情報を収集し、複数のセンサー情報を組み合わせてタイヤ力を推定するモデルを通して、タイヤ力を出力する仕組みを構築する。
タイヤ力推定モデルについては、センサー情報や人の指示などの非構造化データなど「一見関係なさそうな情報なども全て一度取り込んで、結び付けていくことを考えた。予測モデルを構築しPoC(概念実証)を進めた」と榊原氏は語る。
現在は、これらの予測モデルが機能するかどうかをTOYO TIREのテストコース内でテストを繰り返し、さらに予測モデルのブラッシュアップなどを進めているという。
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December 01, 2020 at 09:30AM
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